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フォルテギガス 機体名 フォルテギガス 全長 51m 主武装 ムーンサークル チャクラム状に変化させたフィガを敵に投擲する。 ストームブレード ビームサーベル状に変化させたフィガを両手に持って敵を幾度も斬り付けた後、相手を空高く斬り上げる。そしてフィガを柄の部分で連結、高速回転を行わせて敵を斬り付ける。ドラグナー1のレーザーソードを想像して貰えれば分かり易いかと思われる。 ビームハンマー フィガをガンダムハンマー状に変化させて、敵に叩き付ける。 ギガブラスター 腹部から発射する超大出力のビーム砲。発射時に発生する熱を逃がす為、ギガブラスター使用時にはフェイスオープンが行われる。 ライアットバスター ビームサーベル状に変化させたフィガを一つに結合。巨大な剣に変化させて、相手を一刀両断にする。 特殊装備 特殊自律機動型兵器『フィガ』 様々な形状に変化する特殊な武器。左右の手に一つずつ装備する事が可能。 シュンパティア 精神を共鳴させる特殊なシステム。ジョシュアとグラキエースはこのシステムによって、お互いの精神を一部共有している。お互いの考えている事や感情の波が伝わったり、人格に影響を与えたりといった効果が見られた。なお精神の共鳴は、シュンパティア搭載機に乗った人間同士、極めて相性の良い者同士に起こる模様。 分身 この巨体が分身する画を考えるとなかなかシュール。 ビームコート ビーム兵器のダメージを軽減する。 移動可能な地形 空:○ 陸:○ 水:△ 地:× 備考 名前の意味はラテン語で“強き巨人”。ストレーガとガナドゥールの合体形態。レース・アルカーナ二基を直結した事により理論上は無限の出力を持つ事になるが、機体が耐えられないので真の力は発揮出来ない。ただしグラキエースルートだとレース・アルカーナの片方はファービュラリスに移植される為、無限出力の設定は無し。また、ガナドゥールとストレーガへの分離機能もオミットされる。
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思いこみ、勘違い、嘘、そして…… ◆JF9sfJq3GE この世界の中では一・二を争うほど広大な森林地帯――実に南北に約130km、東西に約100kmにも及ぶ豊かな原生林の南東の端に、白亜の戦艦が静かに鎮座していた。 一組の男女が焚き火をかこっていた。その明りを受けて少女の影が暖色に染まった戦艦の外壁にまで伸びていた。 そこからタラップを伝って一人の少年が姿を現し、二人を見つけると声をかける。 振り返った二人の口にはスプーンがくわえられていた。 「人を働かせておいて呑気に食事ですか……」 口調に若干の刺がにじみ出る。それに気づいてか、はたまた気づかずか、二人は「ごめんごめん」とあまり悪びれもせずに軽く返した。 「周囲の警戒は?」 「トモロがしてくれています。それにしても……」 質問に軽く答えを返した少年が、席に座りつつ視線を流す。 「二人でどれだけ食べる気ですか……」 ため息がこぼれた。 キラの視線の先にはレトルト用品のパッケージやら、空になった缶詰やら、二人が食べ散らかした残骸の山が大量にあった。 しかも、その細い体で隠すように座っているが、赤毛の少女の山のほうが大きい。 これにはさすがの二人も苦笑いで返すほかなかった。 テニアが器によそってくれた母さんのシチューを受け取りながら、キラは本題に入る。 「簡単なものですけれど解析結果が出ましたよ」 その一言でムサシの表情が強ばり「どうだった?」と先を促す。テニアは大して興味もないのか、自分の器に新たなシチューをよそっていた。 その様子を若干呆れた感じで眺めながらキラは言葉を続ける。 「テニアの言ったとおり核みたいですね」 その重く苦しい響きにムサシは顔を伏せた。 しばらくの沈黙の後、「そうか……」と小さくつぶやく。 「それでですね。あれは僕のほうで預からせてもらっていいですか?」 その申し出を耳にしたとき、不覚にもムサシの顔には安堵の色が浮かんだ。 核を持ち歩き始めたときから感じ始めた麻痺するような緊張感、重くのしかかった重圧感、そういったものから解き放たれるかもしれない。そういう感じの色だ。 だが、すぐにその表情も色を潜める。 ムサシの瞳に大人しそうな少年がうつっている。 まだ幼さを残す年頃、一見すると華奢と言ってもいいほどの細い体、こんな少年にこれだけの重荷を背負わせていいのだろうか……。 「剥き出しのまま持ち歩くのよりは、戦艦の中で安置させておいたほうが安全。そう思いませんか?」 その言葉に反論の余地はない。常識的に考えるとそうなのだ。そんなことは頭の鈍いムサシにでもわかっていた。 だからといって理屈だけで割り切れるものでもない。 「それに……、あれは決して爆発させちゃいけないものです……」 重なる言葉を受けて、ムサシの鼓動がひときわ大きく鳴る。 しばらく沈痛な面持ちで考えた後、絞り出すような声でただ「すまない」とだけ言った。それが了承の言葉であった。 闇色に染まった森林の中、焚火の明かりだけが灯っている。 闇に脅える人に安堵と安らぎを与えてくれるはずのそれが、何故かこのときはひどくまがまがしいものに見えた。 寡黙な空気がその場を支配する。さっきまでは呑気にシチューをがっついていたテニアでさえも押し黙っている。 カチャカチャと食器とスプーンが奏でる音、ただそれだけの音が、このときはひどく大きな音に聞こえていた。 『北北西からこちらに接近してくる機体がある。機数は1。かなりの高高度だ』 突然、トモロの声が静寂を破った。 それを合図に、全員が蜘蛛の子を散らしたように機体に駆け込む。 やがて、起動兵器の駆動音が周囲の空気をかき乱し始めた。 『訂正、機数2。もう一機は地上だ。空の機体の後ろをついてきている』 その頃になって、トモロは訂正を伝える。 「トモロ、通信は? 」 『まだ圏外だ』 「空のほうは僕が接触してみます。ムサシさんは地上のほうをお願いします。テニアは念のために後ろに下がってバックアップ、万が一戦闘になった場合は離脱を手伝って」 「了解」 「まかせろ。キラ、発砲は」 「わかっています。ギリギリまで通信を続け、こちらから先に攻撃は仕掛けません。トモロ、反応弾の搬入は?」 『終わっている』 トモロの返答を聞いたとき、キラは何かが重く覆いかぶさっているかのような感覚を覚えた。 これから行う接触に対する緊張感ではない。反応弾の影響だろう。 解析結果の数値をみてもその破壊力はピンとこなかったが、嫌なものを運んでいるという生理的嫌悪を間違いなく感じていた。 そしてそれ以上に、『核』という言葉がもたらす根源的恐怖感がのしかかっていた。 (大丈夫。きっとうまくいく。戦闘になんてならずにすむんだ) 自分に言い聞かせていたとき、ムサシが口を開いた。 「キラ、実はな……」 見るとムサシはガンダムの足の裏で焚き火を踏み消しつつ通信を行っている。 「実はおいら、その核を使おうと思ってた」 驚いたキラの瞳が大きく開く。 「無敵戦艦ダイのことは話したよな? 」 「ええ、合流したときに……」 無敵戦艦ダイ――恐竜帝国最強のメカザウルスにして、ムサシが命を賭した相手。その装甲とバリアは恐ろしい厚さを誇り、ゲッターの攻撃は何一つ通じなかった相手でもある。 それがこの世界にも存在し、その打倒のために彼が仲間を集めていることは、すでに聞いていた。 それを語ったときのムサシの声の苦渋の響きは、それがどれだけ許されない存在なのかを物語っていたように思えた。 「おいら、反応弾を手に入れたときにちょっと思ったんだ……。これでダイを落とせるって……」 ムサシの独白は続く。 「でも、本当はそんなこと考えたらいけなかったんだよな。キラ、お前の言うとおりあれは使っちゃいけないものなんだよな……。 だからきっと、あれはおいらが持つものじゃなかったんだ……」 何かを考えさせられるそんな言葉だった。 「なあ……」 モニターに映されたムサシの顔が優しく笑う。 「おいらとキラにテニア……それにトモロ、まだ会ったことない統夜、これだけ集まれば奴に勝てるかな?」 リョウや隼人がいなくても……と付け足そうとしてやめ、ムサシはそこで言葉を区切った。 「ええ、きっと……必ず」 どこかの通信を傍受したのか突如耳元に耳障りなノイズと人の声が流れる。 レーダーに反応はない。 何の影響か知らないが、この世界では通信可能距離がレーダーの有効範囲よりも長いこともあれば逆もある。 場所によってその有効距離さえもバラバラ。まるででたらめだった。 耳を澄ます要領で意識を凝らし、感度を上げていく。 ……男が3に女が1か。 ノイズに紛れて届いてくる声の数から人数が割り出せた。 だが、話の内容に関しては断片的にいくつかの単語が届くだけでつかめない。 情報を拾い上げようとさらに注意を傾けつつ、迂回路を頭の中に思い描く。 できることなら交戦は避けたかった。 『無……艦ダイの…とは話し……な? 』 『ダイ』という単語が耳に飛び込んできた。 無敵戦艦ダイ――この世界におけるユリカの乗機であり、このわずか数ブロック先で自分の帰りを待っているはずの戦艦である。 なんだ? なんの話をしている? こいつらはユリカとどんな関係か? ユリカの身にあったのか? 一体こいつらは何を知っているのか? 焦る気持ちを抑えつつ、流れてくる言葉に耳を澄ます。ノイズ音に邪魔をされてところどころしか音声を拾えない。 それがすごくもどかしかった。 『おいら、反応弾…手に入れ……きに…………思った…だ……。こ………ダイ…落とせ…って……』 野太い男の声が看過出来ない内容をアキトに告げる。 一瞬、何を言っているのかわからなかった。いや、頭では理解できたが、意味が届くまでに時間がかかった。 その言葉は告げている。 ユリカを殺すと―― それもよりにもよって、核で滅ぼすと―― 聞くに堪えられなくなり、傍受していた通信を切る。 いつの間にかいたのか、汗が玉になって肌に浮いていた。 見過ごせるはずがない。そう、この事態をこの男に見過ごせるはずがなかった。 自然と機体の足が速くなる。 どんどんと速力を上げていき、周囲の景色が流れるように後方に遠ざかる。 雲海の中に分け入り高度を徐々に下げていく。 雲を抜けたアキトの視界に、ナデシコに比べれば幾分小型な、しかし巨大な戦艦が飛び込んできた。 思わず目を疑った。 だって、あれは―― 「あれは……カティア? 」 ムサシの呟きが通信機越しに聞こえてきた。 そう。あれはカティアの機体だった。ここで再会したときの戦闘機。 でも……でも、そんなはずはない。 だってカティアは―― ――アタシが殺したんだ―― 不意にテニアは痛みに似たものに襲われて、顔をしかめた。 笑顔のままのカティアの死に顔がゆっくりと浮かび上がり、 『統夜はあなたのものにはならないわ』 囁きを一つ残して消えた。 (考えすぎるな……あれはカティアじゃない) 自分に言い聞かせる。 あれは―― ――カティアの機体を奪った誰かだ―― 嫌な考えを振り払い、上空を睨みつける。 同時に上空の機体がぶれたかと思うと重い衝撃が機体に走り、吹っ飛ばされ、背後の巨木に叩きつけられた。振動が伝わり、周囲の木々がざわめく。 攻撃された? 誰に? ……カティアだ。 やっぱりあれはカティアなんだ……。 途端に目に脅えの色が浮かび、顔は青ざめる。 振り払ったはずの考えが頭をよぎり、満たした。 カティアだ。 カティアがアタシを殺しに来た。 だったら―― 巨木にすがりつくようにして立ち上がる。 カタカタと震えながらマシンナリーライフルの銃口が上空に向けられる。 ――だったら何度でもアタシが殺してあげる―― 瞳に狂気が宿り、震えが止まる。発砲音があたりに響きわたった。 一度状況を確認する。 ムサシは接近しつつあるもう一機の警戒にあたり、テニアは伏せ手としてレーダー外の森林に隠れている。 周囲に他に機影はない。相手から見たら、こちらは単艦で姿をさらしているように見えるだろう。 モニターに目を向ける。 夜の闇を保護色にした一基の戦闘機がそこには映し出されていた。幾度かの戦闘をくぐりぬけてきたのか、見ただけで各部の損傷が激しいのがわかった。 一度大きく息を吸い込んで呼吸を整えるとキラはコンソールに向かい合う。 「トモロ、通信を繋げて」 『わかった』 モニターに大仰なヘルメットをかぶった男が映し出され、二人の目が合う。 「こちらはキラ・ヤマト。交戦の意思はありません」 「こちらはテンカワ・アキト。聞き」 そこで唐突に言葉は途切れ、男の視線が動く。モニターの先の戦闘機が大きくループを描いた。 (回避運動? どうして? ) 『銃弾だ。角度からしておそらくテニアだな』 キラの思考を読んだかのようにトモロが補足を付け足す。 「テニア! どうして撃ったんだ!! 」 思わず通信を切り替え、声を荒げて叫ぶ。だが通信が不調なのか、それとも何かあったのか、ノイズが流れてくるばかりで繋がらなかった。 「それがそちらのやり口か……」 男の冷たい声が響く。 「待ってください! せめて話だけでも!! 」 「……」 戦闘機が戦艦の脇をすり抜けていく。 その直後、戦艦はゆれ、キラは固く握りしめた拳をコンソールに叩きつけた。 すれ違いざまに放ったミサイルの群れ。それは巨大な的にまっすぐ迫っていき、見えない何かに阻まれて爆発を起こした。 (ディストーションフィールドか? いや……実弾の無力化……、ピンポイントバリアか、もしくは同等の特性を持った知らない技術だな……) 『僕たちは戦うつもりはない。話を聞いてください』 未だ通信機の向こうでこの戦艦の主は叫んでいる。「手違いだ」という言葉も飛んでくる。 アキトは一笑にふした。 巨大な戦艦に注意をひきつけ、交戦の意思はないと油断させる。そうやってできた隙を狙い狙撃してきた。 明らかに計画的なおこないだ。それを手違いなどとは、信じられるはずがなかった。 『ノイ=レジセイア、僕は奴の存在が許せない!だから僕は奴の言いなりにはならない』 少年が独白を始める。それに何も返さず、攻撃の手も緩めない。 『この殺し合いに異を唱える人達を集めてノイ=レジセイアを倒す。そう決めたんです』 その言葉には、あの二人のネゴシエイターのように、どこか真に迫った力強い響きが込められていた。 だから何だと言うのだ。そのネゴシエイターの片割れリリーナ=ピースクラフトでさえ死んだ。 なるほど、この少年の主張は彼らに比べれば、すべての参加者の説得を謳わないだけ幾分現実を見ているように思える。 主催者の打倒に心が動かないでもない。 しかし、少年の主張は無意味だった。 アキトにとって最大にして唯一の重要事項、それはユリカを無事に守り抜くことができるか否か、それだけに絞られる。 そして、その視点から見たときこの少年は―― 『僕の意見に賛同してくれなくてもいい。せめて他の参加者の脅威となる無敵戦艦ダイ、それを倒すのを手伝ってくれませんか? 』 ――滅ぼさなくてはならない敵だ。 少年の言葉が神経を逆なでする。 YF‐21は空高く飛翔するとJアークの直上から再び攻撃に移った。 ガンポッドの発射管が火を噴く、ミサイルが白い航跡を残して伸びていく、それらはバリアのただ一点に着弾し、穴を穿ち、数発が抜けていった。 轟音と共に激しい震動がJアークを襲い、キラは転んだ。 「トモロ、損傷は? 」 急いで身を起しながら口早に言う。 『軽微だ。だがしかし、まずいな……』 「まずい? 」 『相手は火力を一点に集中してジェネレイティングアーマーを抜いてきている。だが、いくら抜かれようとあの程度の火力ではそう大きな損傷は与えられるものではない』 このまま説得を続けても特に問題はないように思えた。だが『しかし――』とトモロは続ける。 『反応弾付近に被弾した時だけは話は別だ……』 キラの表情が凍りつく。 万が一あれに誘爆したらJアーク一隻が沈んで済むような話ではない。6基の反応弾からなる連鎖爆発――それはおそらく一ブロックを壊滅させるに足る威力だろう。 『どうする? 』 ここまで説得に応じない相手、万が一の場合の被害、それが頭の中をめぐり 「しかたありません。あの機体を撃墜します」 キラは判断を下した。 パチパチパチ―― 突如、拍手が聞こえてきた。 何か嫌な予感がして体中から汗が噴き出てくる。 「クク……、いいねぇ。なかなかの役者ぶりだ」 凍りついたように体が動かなかった。 「最初にお嬢ちゃんたちの会話を傍受した時に俺は思ったよ。こいつはよくない」 そんな状態を知ってか知らずか、声の主は流暢に語り始める。 「何しろお前さんたちときたら、話し合いで済まそうとしている。人生は楽しまないと損だぜ? そこで面白おかしく騒ぎを大きくするために、俺は考えたのさ」 背後から何かが忍び寄ってくる――そういう気配を濃厚に感じた。 「で、お前さんを見たときピンときた。何に脅えてるか知らないが、こいつは使えるってな。あとはちょいと恐怖心を煽ってやった結果がこれさ――」 背後からぬぅっと伸びてきた手が巻きつき、コックピットにナイフが突きつけられる。 「いい役者ぶりだったが、出番が終わればひっこむのが役者だ。分るか、お嬢ちゃん? 」 覚悟を決め、一つ大きく深呼吸をおこなう。 「ええ……」 「そろそろ新しい役者の出番だ……。死にな」 男のセリフと同時にナイフが動く。 金属音が鳴り響き――男のナイフが弾かれた。 その隙に転げるように前に飛び込んで腕をくぐりぬける。 そして反転、後ろに跳び退きながら銃を構えた。 「残念、退場するのはあんただよ! 」 引き金に指がかかる。 合わせた照準の向こうで、黒い機体が突き出した左手がまっすぐ急速に伸びてくるのが見えた。 「えっ? 」 コックピットを大きな衝撃が襲い、背後の木々をなぎ倒しながら弾き飛ばされたベルゲルミルは、大地に爪痕を残して倒れた。 「テニア! テニア! 返事をしろ!! 」 声を荒げ呼びかけるが返答はなかった。 これはおいらのミスだ。 上空にカティアの機体が姿を現したとき、おいらはそれに気を取られた。 そして、おいらが相手しなければならないはずの機体を見失った。 慌てて苦手なレーダーをいじくりまわし、やっと見つけたと思ったときにはすでにテニアはつかまっていた。 ナイフをバルカンで弾き飛ばすのには成功したが、テニアは助けられなかった。 だからこいつはおいらが倒さなきゃならねぇ相手だ。 「クク……、ようやくお仲間のご登場か」 目の前に悠然と立ちはだかる黒いガンダムを睨みつける。 「どうした? かかってこいよ。そこに転がっているお仲間を助けたいんだろ? 」 これは挑発だ。わかっていたが、それを受け流せるはずもなくムサシは手にしたハンマーを振るった。 巨大な鉄の塊が唸りをあげて迫ってくる。それをわずかに踏み込んだだけでかわしたガウルンは、一気にムサシに肉薄すると投げ飛ばした。 「おいおい。まさかこれで終わりじゃないだろうな? 」 ガウルンが軽く挑発する。 起き上ったムサシはハンマーを手放し、ビームサーベルを引き抜いた。 再び両者の間合いが縮まり交錯する。 袈裟斬りに振るい下した粒子の刃を腕の部分を受け止めると、ガウルンはそのまま当て身を喰らわせる。 弾き飛ばされながらもガンダムのバルカンが火を噴き、弾薬がマスターガンダムに襲いかかる。 それをマスターガンダムはマント型のシールドを展開させて防ぎ、そしてそのまま強引に距離を詰め、十分に縮まったところで再びマントを大きく広げた。 ムサシの眼の端に紫に輝く腕が見え、とっさに盾を構える。 「ダアァァクネスフィンガアアァァァァ!!!」 ズンッと思い振動が伝わり、防ぐ盾を鮮やかなオレンジ色に染めあげる。マスターガンダムの指がズブズブと盾に沈み込んでいく。 その盾が完全に融解し盾ではなくなるその寸前、ムサシは盾とサーベルを捨てた。そして空いた両腕はそのまま伸び、 「へへ、捕まえたぜ」 マスターガンダムの両肩を捕まえた。ムサシの口がにやりと笑う。 マスターガンダムが大きく揺れ、ガンダムを中心に大きな円を描く。それは徐々に遠心力で加速をつけていき、小さな竜巻をその場に巻き起こした。 「大!雪!山!おろしいいぃぃぃっ!!」 錐揉み状態で上空に巻き上げられ、マスターガンダムの装甲が悲鳴を上げる。強烈なGにガウルンの意識がブラックアウトしかかる。 その意識の隅で真っ直ぐに迫ってくるハンマーを見た。 (ハッ! いい攻撃だ……だが! ) ムサシは目を疑った。 大雪山おろしで上空に投げ飛ばし、錐揉み状態にあった黒いガンダム。それにハンマーを投げつけたのだ。普通ならば回避はおろか防御すらできないはずだった。 だが、今目の前のハンマーにはヒビが走り、そして崩れた。紫の布状のものが伸びてくる。 直後、重い衝撃が奔り、機体が悲鳴をあげ、深い森林の中へ埋没した。 「思ったよりも手こずっちまったな」 機体の各部の損傷のチェックを終えたガウルンは、わずかばかり離れた空を見上げた。そこではまだ激戦が繰り広げられている。 「おうおう、派手にやってるねぇ」 にいっと笑みが零れおちる。 最初からベルゲルミルにもガンダムにも興味は薄かった。彼が今回最も興味を抱いた相手はJアークだった。 航空力学を頭から否定したフォルムで中に浮かぶ戦艦――彼の住む世界では常識はずれのその存在に興味を持たずして、いったい何に興味を持つというのだろう。 ひときわ大きい爆発が起こるのが見えた。 「まだ間に合うな。そいじゃ、ちょっと混ぜてもらいに行ってきますか……」 どこかそこらに散歩にでも行くような、そんなかんじで再び男は戦場に身を投じた。 なんて……、なんてざまだ……。 なにがテニアと統夜を会わせてみせる……だ。 なにがこの娘を死なせるわけにはいかない……だ。 「おいらはテニアを守ることも……敵を倒すこともできないじゃないか……」 ガウルンが飛び去ったあと、ムサシは倒れたベルゲルミルの横で立ち尽くしていた。 視線の先には降り注ぐ弾薬の雨と一人奮戦を続けるJアークの姿があった。 何故だ! 何故こんなにも この機体は脆い! 何故こんなにも この機体はとろい! 何故こんなにも おいらは弱い! 情けなかった。ただ自分が情けなかった。 この機体がもっと頑丈なら、銃弾の降り注ぐあの中にも飛び込んでいけた。 おいらがもっと射撃がうまければ、ここからでも援護することができた。 リョウや隼人ならきっとこんなことはなかったはずだ。 テニアを統夜に会わせるまで守るって決めたのに、現実の自分は無力だった。 「クソォッ!!!!!!」 拳を固く握りしめ振り上げる。 しかし、その拳を振りおろす先は存在しなかった。 数本、いや数十本の閃光が地と空ただ二つの機体に殺到する。 それを巧みにかわしながらジリジリと距離を詰めていたガウルンは、しかし徐々に疎から密になっていく閃光の群れに阻まれ、一旦接近をあきらめた。 地上に着地するや否や大地を蹴ってその場を飛び退く。爆音が響き、地面が抉られる。 それを小火器が追いやり、ミサイルが追尾し、爆雷が吹き飛ばす。 それを身をひねってかわし、遮蔽物を利用して火線を防ぎ、飛び退く。 「おいおい。周囲の地形が軽く変わるほど撃ち込んどいてまだ撃ちたりねぇのか」 一向にやむ気配のない銃声、集中豪雨のように降り注ぐ弾丸、圧倒的な火力を前に思わず愚痴がこぼれた。 距離を置いているときはまだいい。いくらかの余裕をもってかわすことができた。 しかし、距離を詰めるに従って火線は密になり、回避スペースを奪う。そこを抜ければあいての射角は極端に制限される懐に、入り込めるはずだった。 だが、先ほどから一定ラインを超えらない。全ての火器が完全に統制され、接近を阻んでいた。 (一人で攻城戦を仕掛けているようなものだな……いや、二人か……) ちらりと空に目をやる。眼の端で、弾幕に遮られあえなく距離をとる姿が見えた。 (空も似たような状態か……) いずれにせよマスターガンダムでは接近しなければ埒があかない。 紫に輝く光跡を残しながらガウルンは再び突撃を仕掛けた。 「キラ! このままではじり貧だぞ」 「わかってる」 二機の回避力はすさまじく弾薬は徐々に減っていっている。 かといって温存は不可能。この巨大な艦体を守るためにも、ムサシとテニアを守るために敵を引きつけておくためにも、どうしても相応の弾幕は必要であった。 さらに付け加えるなら、キラのパイロットとしての特性が、戦艦という機体と一致していなかったことも一役買っているのかもしれない。 ともかく、二機を沈黙させねば撤退も難しい状況である。 (どっちからだ?) 思考を練る。 Jアークの退避を優先するならば空だ。地上の黒いガンダムの空戦能力はJアークに比べれば極端に低い。ならば戦闘機をどうにかすれば撤退は容易になる。 だが、仲間の安全を優先するならば地上だった。広い森林地帯に紛れこみ身を隠せば、空からの発見は容易ではない。黒いガンダムをおとせばひとまず味方の安全は得られるであろう。 「トモロ、艦下部の火器を一割温存させて」 「それでは突破されてしまうが…… 」 「いいんだ。温存した火器の発射のタイミングは僕がとる。 トモロは空中の機体の牽制を続けて」 「わかった」 続けて必要な指示をすべて飛ばしたあとモニターに向きなおる。 このあと黒いガンダムに起こるであろう隙、それを逃すわけにはいかなかった。 黒い機体が緻密に動き、巨大な戦艦との距離を詰めていく。 周囲に溢れる光の帯を装甲の表面をかすらせる程度でかわしていく。 その動きは一切の無駄がなく、滑らかで、一つの芸術品ともとれるほど巧みだった。 やがて最後の弾幕をかわしたガウルンの視界は、大きく拓けた。 「ひゃぁぁぁっはぁぁぁ!ダァァアクネス!」 口の端がつりあがり下卑た笑みが知らずと零れおちる。 後はがら空きの横腹に穴を開けて内部から破壊するだけだった。 紫に発光した右手を携え、急速に速力をあげたガウルンはJアークに突撃し―― 「フィン」 ――何か見えない壁に機体がぶつかり、弾かれた。 「トモロ、今だ! 」 キラは待っていた。弾幕を抜けたガンダムがジェネレイティングアーマーにぶつかり、機体そのものが弾かれる瞬間を。 合図と同時に温存していた火器が一斉に火を噴く。 「クソッ!今のは何だ? 」 不意に何かに衝突し、体勢を崩した。 (あ~あ、せっかくここまで苦労して詰めた距離がパアだ……) 弾かれた機体が下降に転じ、ゆっくりと艦体が遠のいていく。そのとき、視界が唸りをあげて飛来する無数の火器群を捉えた。 (なるほど。喰えねぇ奴だ) 何が可笑しいのか笑いが込み上げてくる。 (だが、この程度ならかわせるなぁ) 飛来する火器群が殺到するまでにかかる時間的ロス、ほんの数秒にも満たない時間だったが、ガウルンにとってそれは十分な時間であった。 慌てず、冷静に機体を立て直そうとしたその瞬間、装甲が悲鳴をあげ、機体が軋んだ。 その突然の爆発に困惑する。眼に映る火器群が起こしたものではなかった。 それはESミサイル――発射されると空間を超越して目標の至近に出現する空間転移型のミサイルが起こしたものであった。 だが、ジェネレイティングアーマーもESミサイルも彼のいた世界には存在しなければ、それに対する知識も当然持ち合わせていない。 ゆえに、何が起こったのか想像に難しく、予測がつかない事態でもあった。 「ハハハ! やるじゃぁないか…… 」 機体を立て直す時間はすでになくなっていた。 無数の弾薬が体勢を崩したガンダムを飲み込むのを確認して、キラは次の指示を飛ばした。 「ジェイクオース、射出! 」 依然として弱まることを知らない弾幕をかわしながら、アキトは敵艦の下方で爆発がおこるのを確認した。 「……落とされたのか? 」 しかし、それに気を取られたのも一瞬、すぐに敵艦の異常に気づく。 艦首から巨大な錨のような物体が撃ち出される。それは見る間に炎を纏っていき、さながら火の鳥のごとき形状へと変化してアキトに襲いかかった。 「艦載機か? ……なっ! 早い!! 」 変幻自在な軌道を描きなら迫る火の鳥をバレルロールでかわすと、即座にスプリットS(縦方向にUターンするマニューバ)で背後をとる。 Jアークからの弾幕がかすって右翼がわずかに火花を散らした。 「……消えろ」 ガトリングガンポッドの射線がジェイクオースを捉え、撒き散らされた弾丸が迫る。 だが次の瞬間、取り巻く炎に弾かれた。 「チッ! 」 舌打ち一つする間に相手は再びこちらに機体をぶつけようと、不規則にその動きを変えてくる。 対して、常に相手の背後をキープしようと、アキトも歪な航跡を残しながら空を舞う。 上、下、前、後、左、右、二機の位置が目まぐるしく入れ替わる。残された航跡が幾度も交わる。 旋回時の強烈なGに引っ張られ、皮が肉から剥がれてしまうような錯覚をアキトは覚えた。 後ろをとり、射線を確保する。引き金に指かけた瞬間、敵機が強引に軌道を変えた。 7時上方70°……来るか! 上方から敵機がねじり込むように航路に侵入してくる。 二機の間は急速に縮まり、炎が近づく。 その炎の濃淡がはっきりと見て取れ、機体が受ける熱に悲鳴を挙げ始めたとき、アキトは機体の状態を切り替えた。 機体の各部が動き、ファイターから手足のないバトロイドに姿を変える。一気に増した空気抵抗によって速力は削がれ、急速に二者の間隔が広がっていく。 体当たりを主武装とする高起動型ブラックサレナ――それを愛機とするアキトにとって、不規則に変化する軌道は読めなくとも、衝突の瞬間を読むことは可能だった。 視界に無防備な火の鳥がうつる。その隙を逃さずに打ち放たれるビームガン。それが次々とジェイクオースに着弾する。 ……5、6、7、8発目が炎の壁に穴を穿ち、その後続が炎の下の本体にダメージを与える。火の鳥が大きくぶれ、よろめきながら艦首に戻って行った。 そして、再開されるのは牽制の弾幕。息のつく暇もない。 ……徐々に威力が落ちてきていた? 細かいことはわからないが、あの兵器は蓄えたエネルギーを放出しながら進む類のものらしい。そして、取り巻く炎は時間の経過とともにその力を低下させる。 低下した結果、最初は抜けなかったあの炎を抜くことができた。そういうことだろう。 だが一度本体に戻った以上、またエネルギーを補充して出てくる。そう見るのが妥当だった。 その速力を考えると、離脱すら困難な状況に置かれたと思えなくもなかった。 「よう、生きてるかい? 戦況は芳しくないようだな 」 通信が一つ入る。地上で戦っていたあの黒い機体からだった。 「まだ生きていたのか……」 「御挨拶だねぇ。危なかったが、まっ、見ての通りだ」 「……用がないならきるぞ」 「おいおい、話はここからだ。俺はもう一度仕掛ける。しばらく注意を惹きつけておいてくれねぇか?」 奇妙な違和感を覚えた。敵はすでにこの黒い機体を撃墜したと思い込んでいる。わざわざ通信を繋いで伝える必要はないのだ。 「それだけか? 」 「もうひとつ。俺が落とされたら、『愛してるぜ、カシム』って伝えてくれ」 「……なんだ、それは? 」 「なんだって……遺言さぁ。お前にはないのか? 一つ二つ言い残しておくことがよぉ。 言ってみな。お前が落とされた場合、俺が伝えてやるよ」 取り残されるユリカの姿が頭をよぎり、心臓が高鳴る。 しばしの沈黙の後、アキトの重い口は開いた。 「ミスマル・ユリカという女がこの先に……D-7にいると思う。彼女を……守ってやってくれないか……」 言ったあとで、言いようのない不安がアキトを支配する。 「ユリカ……ユリカちゃんか……クク」 通信機の向こうで相手がにやりと笑った気がした。 「知っているのか? 」 何か取り返しのつかないことを言ってしまった、そういう予感が頭をよぎる。 「ああ、知ってる。死んだよ……彼女。俺が殺した……」 肌がふつふつと泡立つ。 「なん……だと……」 全身の毛が怖気立つ。 「一人、見捨てられた彼女を追い詰め、弄り殺してやった。かわいそうになぁ……」 血液が逆流する。 「最後には二目と見れない顔になってしまって。あ~あ、かわいそう、ユリカちゃん」 嘘だ……。 頭が言葉を否定する。 「彼女の最後の言葉を教えてやろうか?『ごめんなさい』だとよ。健気だねぇ。 これは誰に向けた言葉なのかな?クク……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」 さして見えぬ目の瞳孔がいっぱいに広がる。もはや巨大な戦艦は、アキトの視界には入らない。機体のシステムに支えられた視界は、地表の黒い機体だけを映していた。 生かしておけない。 そう思った。 噛みしめた歯ギリッと音を立てる。 「憎いか? 俺が憎いか? そうだ俺を憎め! さあ! さあ!! さあ!!! 」 こいつだけは生かしておけない。 そう思った。 そう―― ――例え何を犠牲にしようとも―― 「きさまあああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!! 」 絶叫と共に引き金を引き絞られた。 放たれたのは最悪の兵器――反応弾だった。 放たれた反応弾が、ガウルンにかわされ地表に着弾するまでのほんの数秒、その数秒の間に―― ――アキトは一縷の望みを託してリミッターを解除して飛び去り―― ――キラはJアークをムサシ・テニアの盾にするように叫び―― ――トモロはジェイダーをオミットした後、その指示に従った―― そして、全ては光に飲み込まれる。全員の耳に響いたのは、ガウルンの満足気な笑い声だった。 パッと灯った光が急速に大きくなり、闇夜に太陽を出現させた。 あれは何か――と考える暇もなく木々が一斉に燃え、炎が走るのが見えた。炎一色に染まった視界の隅に、倒れているベルゲルミルがうつる。 とっさにムサシがテニアを抱え込むようにして盾になったのと、全てのものを打ち砕く衝撃波が二人を飲み込んだのは、同時の出来事だった。 【キラ・ヤマト 搭乗機体:ジェイダー(勇者王ガオガイガー) パイロット状態:気絶 機体状態:機体全体に中程度の損傷(補給修復開始) 現在位置:C-6 第一行動方針:ジョナサンを待つ 第二行動方針:テニアがもしもゲームに乗っていた場合、彼女への処遇 第三行動方針:このゲームに乗っていない人たちを集める 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出 備考:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復】 【テンカワ・アキト 登場機体:YF-21(マクロスプラス) パイロット状態:死亡 機体状態:消滅】 【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム) パイロット状況:死亡 機体状況:消滅 】 RX78-2ガンダムの瓦礫の中、ムサシが目を覚ます。 まどろみの中、テニアの声を聞いた気がした。 ぼやけた頭で考える、自分はテニアを守れたのか――と。 眼はもう見えなかった。だが、周囲で誰かが身じろぐ気配を感じた。 「テ……ニア?」 名前を呼んでみる。予想以上に口を動かすのが辛かった。 返事の代わりに抱きかかえられる。 あったかくて、柔らかかった。 「無……だった……だ」 「あんた、馬鹿だよ……」 テニアの声が降ってくる。 「あたしなんか……かばってさ」 表情はもう見えない。声色もよくわからない。 それでもムサシにはテニアが無事だとわかった、それだけで充分だった。 心意気ばかり大きくて無力だった。誰の力にもなれなかった。 それでもテニアを守ることができた。 この世界でただ一つ自分がなしえたことだった。 胸のあたりが熱くなる。体の感覚は徐々になくなっていったがそこだけはいつまでも熱かった。 み……ろよ……………お……い…らだっ………て役……………に……………………… 瓦礫の中、赤毛の少女が一人の男を抱いてた。その少女が握っている破片は男の胸に深々と突き刺さっている。 「あ~あ、一からやりなおしか……」 少女は男の反応がなくなると破片を引き抜き、そこらに投げ捨てながら呟く。 「あんたは役に立ったから、首を落とすのだけは勘弁してあげるね」 一度、背後を振り返るとムサシの死骸に向かって微笑む。そして、汚れを気にしつつ少女は歩きだした。 「うわぁ、ベトベト。市街地まで行けばお湯くらいでるかな……シャワー、浴びたい」 【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル) パイロット状況:非常に不安定 機体状況:全体に中程度の損傷(修復中) マニピュレーターに血が微かについている・ガンポッドを装備 現在位置:C-6 第一行動方針:ムサシの代わりを探して騙す 第二行動方針:シャワー浴びたい 第三行動方針:参加者の殺害 最終行動方針:優勝 備考1:首輪を所持】 【巴武蔵 搭乗機体:RX-78ガンダム(機動戦士ガンダム) パイロット状態:死亡 機体状況:粉々】 【残り39人】 【初日 21 00】 本編106話 大いなる誤解 本編111話 とある竜の恋の歌
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死亡者名鑑 第一回放送までの死亡者名鑑 第二回放送までの死亡者名鑑
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アルトアイゼン 機体名 アルトアイゼン 全長 22.2m 主武装 三連マシンキャノン 左腕についてるマシンキャノン。威力に期待せず牽制的な意味合いで使うべし リボルビング・ステーク アルトアイゼン最大の特徴である杭打ち機、完全にマリオン博士の趣味かと思われる。リボルバーの銃口にナイフのようなものが付いており、敵にそれを打ち込み、弾丸を発射、その衝撃で相手を打ち抜く武装。近接にもほどがある近接武装、とびっきりデンジャラスです。重要なのは踏み込みの速度、貫け、奴より速く ヒートホーン 頭部についている角。角に高熱を発生させ相手を刺すなり斬るなりする武装。伊達や酔狂でこんな頭をしてる訳じゃない スクエア・クレイモア 両肩に付いたミサイルランチャーのようなものからチタン製クレイモア弾を発射する。遠くに飛ばないため至近距離での発射が前提、また近づく敵への弾幕としても使えそう。大量の敵に対抗できる唯一の武装。一発一発が特注のチタン弾だ・・・! 切り札 アルトの武装というよりはキョウスケの技に近い武装。三連マシンキャノンで牽制した後、近づきヒートホーンで切った後ステークの有り弾全部打ち込む技。打った後はリボルバーの薬莢を全部抜き「この技を切り札にしたのも私だ・・・」とでも言っておこう 特殊装備 ビームコート ビームコート。あと強いてあげるなら装甲が厚い。 移動可能な地形 空中×、陸地○、水中○、地中× 備考 ゲシュペンストT(テスト)タイプをベースに作られたATX計画の一環として造られた機体、ドイツ語で「古い鉄」元はマリオン・ラドム博士がゲシュペンストMk-2の正式後継機として開発したのだが、操縦のピーキーさと夫への対抗心のためEOT(人類外の技術)を一切使わなかったこと、趣味に走りすぎたなどの原因で量産計画は切られ、古い鉄という不名誉な名を貰った機体。だが平行世界の一つでは正式量産されており、その隊長が使う機体は青色である。しかしその性能の高さはかなりのもので、キョウスケ・ナンブ中尉がこれを駆り、数々の戦果をもたらしている。機体コンセプトは「絶対的な火力と強固な装甲による正面突破」ガンダムの「一機にて戦況を揺るがすMS」という一機でどうにかなるという考えが似ている。分の悪い賭けが大好きなキョウスケ自身も当初は「馬鹿げた機体」と評している。当時の彼はその馬鹿げた機体を更に馬鹿げた機体にするとは一寸も思わなかっただろう。ブーストの緩急の激しさ、操縦性の悪さ、遠距離武装一切無しと、これで量産競争に勝てというほうが無理な相談であるのは内緒だ。マリオンさん、もう少しパイロットや他の人のこと考えようよ・・・なお、このイチバチな機体の思想はビルトビルガーに受け継がれた。とは言ってもカーク・ハミル博士が主な設計を担当したので、イチバチなのはマリオン博士が関与した武装面である。
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◆ 「……嫌だ…嫌だ」 立ち並ぶ廃墟をなぎ倒し、抉れた大地が一筋の巨大な爪痕になっていた。 その爪の先で地に伏すヒメ・ブレン。その中でアイビスはうわ言を繰り返し呟いている。 うつむき、小さく丸まり、膝を抱え、体は芯から奮え、瞳孔は開き、焦点の合わぬ瞳は揺れ、歯の根も噛み合わず、心も折れた。 怯えが、慄きが、恐怖が全身を支配している。 「アイビス、無事か?」 ――通信? 僅かに顔を上げ、コックピットの内壁にぼんやりと開かれた通信ウインドウに目を向ける。 端整な顔立ちの青年がそこにはいた。 「ク……ルツ?」 「動けるな? やり返すぞ」 「無理だよ!」 息巻くクルツの声に咄嗟に反対の言葉が出る。本心だった。 自身の無力を思い知らされ心砕けた少女を目の前にして、驚きの表情をクルツが浮かべる。 「何……言ってんだ?」 「……無理だよ。ジョシュアの敵討ちなんて……私には無理だったんだ。 あんな奴に……勝てるわけがない。ねぇ、逃げよう。逃げようよ。ここから逃げちゃおう」 「お前、本気で言っているのか?」 「本気……だよ。だって仕方ないよ。勝てないんだ! 怖いんだ!! どうしようもないんだからっ!!!」 ギンガナムを思い浮かべると何をするのよりも恐怖が先に立つ。涙がこぼれ、体が震えてどうしようもなかった。 「そうか……悪かった。悪かったよ。すっかり忘れてた。誰も彼もが戦闘に慣れてるわけじゃねぇんだよな。 どいつもこいつも機動兵器の扱いに長けてやがるから、ついあいつらといる気になっちまってた。……俺は残るぜ」 「無茶だよ。あんたもうほとんど弾ないんでしょ……殺されちゃうよ」 「あぁ、その通りだ。だからアイビス、俺は無理強いはしないぜ。でもよ。ここで逃げちまってもいいのか? そりゃ俺だって死ぬのは怖いさ。逃げ出したくなることもある。だけどよ……命を懸けても絶対に譲れないことって……あると思うんだ。 これさえやり遂げれば一生胸張って生きていけられる。そういうときってあるだろう? だから俺は諦めない。だから俺は戦う」 思わず見上げた瞳に真っ直ぐな目をしたクルツの顔が飛び込んできた。その顔が一度にっと笑い、すぐに真面目な表情を作る。 「柄にもねぇことを言っちまったな。まぁいい。後は俺一人でやってみる。助けに入ってくれたラキは見捨てられねぇ。例え勝てなくても一泡吹かせてやるさ。 お前は逃げろ。逃げてそのアムロとか言う奴に悪かったって代わりに謝っといてくれ。じゃあな。お互い生きてたらまた会おう!!」 「あっ! ま……」 返事を返すよりも早く通信は途切れた。ノイズを伝えるのみになった通信機を前に呆けたように立ち尽くす。膝を抱え、丸く蹲り呟く。 「ずるい……」 心の中では逃げ出したい思いと踏みとどまりたい思いが葛藤を続けていた。 こんな自分でもまだ何かやれることがあると思う一方で、行ったってどうせ何も出来やしないといった思いがある。 「ラキが……ラキがいるんだよね」 胸を張って生きていけるのかは分からない。でも、今逃げ出したら一生悔いて生きていくのだろうという予感はあった。 少なくともここで逃げてしまえば二度とジョシュアに顔向けは出来ないだろう。シャアにもだ。 (でも……でも……ブレン、私はどうしたらいい?) お前は行かないのか、と耳元がざわめく。引け目を、負い目を感じながら生きていくのなんて真っ平ごめんだ、と何かが囁く。 それでも足は前に出ない。どうしようもなく怖いのだ。もう一度ギンガナムとの交戦を考えただけで膝が笑い、腰が砕け、足が退ける。 行きたい思いと逃げたい思いが交錯し、アイビスはその場から動くことは出来なかった。 ◆ 蒼と白の巨人が踊っている。 突き出した斬撃が防ぎ、捌かれ、かわされる。 迫る拳を受け止め、受け流し、やり過ごす。 目まぐるしく入れ替わる攻防は一つの流れとなり、流れは次の流れへと滑らかに変化していく。 そんな攻防の中、奇妙な心地よさが全身を包んでいた。 ブレンバーをなんでもなくかわしたシャイニングガンダムの双眸が閃く。 さあ、来い。 お前の番だ。 重心の動きが見える。 体重が左足に移り、右足が僅かに浮く。 その動作をフェイントに、突然撃ち出される頭部のバルカン。 それをすり抜ける様にかわす。 音が消え。 色が消え。 五感が遠くなる。 やがて体も消えた。 何もない空間に残された意識だけが。 飛び。 交わり。 火花を散らす。 エッジを立てる。 刃先が一瞬輝く。 踏み込み、剣を振るう。 手ごたえはない。 そのことに心が湧き踊る。 馳せ違い、反転。 正対し、トリガーを引く。 極小距離からの射撃。 かわせ。 生きていろ。 もう一度、刃を交えよう。 飛び退く。 距離を取る。 体中の体重を足に乗せ。 もう一度、踏み込む。 相手も重心を足に。 そして、バネの様に前へ。 いいぞ、速い。 さあ、もう一度。 交錯する意識と意識。 剣と拳が擦れ違う。 掠ったか。 凄い。 いい動きだ。 楽しい。 しかし、何だ? 少し遅れた。 何故だ? 遅い。 重い。 どうした? どういうことだ? この不自由さは。 このズレは。 それに、声が。 ――ラキ。 男の声が。 ――ラキ。 聞きなれた声が間近に。 ――ラキ、そっちじゃない。 誰……ジョシュア? 不意に長く暗いトンネルを抜けたかのような色鮮やかな景色が周囲を埋め尽くした。 それに気を取られる間もなく、眼前に迫った豪腕の対応に追われて、咄嗟に身をよじる。 装甲の表面で火花が散ったかと思ったときにはもう蹴飛ばされて、1km先の地面を転がっていた。 何という素早さだ。 こんな相手と今まで五分に渡り合っていたというのが信じられなかった。 口の中を切ったのか血の味に気づき、五感が体に戻ってきたということを自覚する。 戻ってこられたのはあの空間に介在していた二つの意思のおかげ。 胸をギュッと掴む。消えたと思っていたジョシュアの心ともう一つ。 ただの機械ではなく生きている機械、感じたズレの正体――ネリー・ブレンの意思。 (ブレン、ありがとう) (……) 視線の先では、急に不調を起こしたこちらをいぶかしみ、待っている相手の姿があった。 その姿は語っている。『もっと戦おう』『もっと殺しあおう』と。 「ん?」 (……) 「大丈夫。もうそっちには引き込まれない」 ――そう。ジョシュアの心の頑張りを決して無駄にはしない。 ◆ 未だ暗い大地に重い足跡を残し、脚部に損傷を抱えたままのラーズアングリフは移動を続けていた。スナイパーであるクルツの頭に、ラキとギンガナムの接近戦に割り込むという選択肢はない。 移動の足を止めずに周囲に目まぐるしく視線を走らせ彼が探すのは、周囲でもっとも見晴らしがいいと思われるポイント。 コンクリートに覆われ、ビルに埋め立てられた市街地と言えど、元の地形を考えれば若干の高低差は存在する。その僅かに小高い丘一つ一つに厳しいチェックの目を向ける。 しかし、廃墟と化しているとはいえ、立ち並ぶビルは高く数も多い。高いところに高いものを建てるというのは、都市景観の一つの考え方なのだ。 絶好の狙撃ポイントといえる場所など見つかりはしない。それでも幾分マシな丘を見つけ、目を付けた。 周囲に気を配り、極めて慎重に、静かに、そして素早くビルの谷間を突き抜ける。坂を登りきったクルツの視界が開け、ラキとギンガナムが切り結ぶ戦場が映し出された。 「ここなら、いけるか……?」 戦場の全てを見渡せるという状態には程遠い。だがそれでもやるしかない。 地に伏せ、短銃に輪切りのレンコンを思わせる回転砲頭をつけたようななりのリニアミサイルランチャーを構える。 掌中の弾は僅かに二発。だがそれでいいとクルツは一人ごちた。 狙撃の前提条件は相手方に悟られないこと。その観点から見るとこの機体は少々派手過ぎる。一度発砲すればまず間違いなく見つかるだろう。 つまり二度目はなく、多くの弾はこの場合必要ない。問題はそれよりも狙撃にはおよそ向かないと思われる火器のほうにある。 近中距離用の小型ミサイル。噴射剤の航続距離には不安が残り、レーダー類が軒並み不調な以上、誘導装置もどこまで信頼できるかわからない。精度に問題が出てくる可能性が高いのだ。 「どうしたもんかねぇ、こりゃぁ……。でも、まぁ、大見得切っちまった以上やるしかねぇか」 頼れるのは最大望遠にした光学センサーと両の目のみ。 なんだかんだ言ってもやることに変わりはない。出来るだけ正確に目標を狙い撃つ。ただそれのみ。 機体を地面に伏せさせると、目を細め、小指の先ほどにしか見えない飛び交う二機の挙動を穴が開くほど見つめた。瞬きはしない。ただじっと動きを止めて来るべきときを待つ。 睨んだ視線の向うで七色に輝くチャクラ光と蒼白いブースターが、蛍のように大きく、小さく尾を引きながら明滅する。 突然、不調が起こったのかネリー・ブレンの動きが鈍る姿が見えた。そして見る間に押し切られ蹴り飛ばされる。 距離にして約1km。両者の間が開く。それを視認した瞬間には既にトリガーを引いていた。 煙の帯を引いたミサイルが銃身から飛び出していく。そして、カサカサに乾いた唇に舌を這わせ、もう一発。 弾装はこれでもぬけの空。だが、とりあえずの人事は尽くした。後は運を天に任せるのみ。 常識に従い速やかに射撃地点から離脱を始めたクルツの耳に、爆発の轟音が届いた。だが、噴射炎越しに直前で身を翻すのが見えた。案の定、爆煙の右上を裂いて敵機が現れる。 その様にクルツはにやりと笑った。 「予想通りだ! 往生しやがれ!!」 グッと親指を立てて突き出した右手を下へ返す。二発目はギンガナムに向かって猛進している。 気づいた敵機が姿勢制御用のスラスターを噴かし、慌てて左へ大きく流れた機体の勢いを殺す。 無駄だ、とクルツは一人毒気づく。場は空中、足場のないそこでは勢いは殺しきれない。ジャマーか、あるいはSF染みたバリア装置でも持っていない限り直撃は避けられない。 それがクルツの下した結論だったが、直ぐにそれは破られ驚くこととなった。 ギンガナムがブンッと音を立ててピンクの光刃を腰から引き抜く。そして、一切の躊躇もなしにミサイルに投げつけたのだ。 結果、直撃前にミサイルが爆発し、呆気に取られて動きを止めたクルツはギンガナムと視線がかち合うこととなる。 「やべっ!!」 息をつく間もなくギンガナムが反撃に転じた。左腕から無数の光軸が殺到する。一制射につき二筋の光軸。 「くそっ! 良い腕してやがる!!」 三制射かわしたところで体勢を崩し、四制射目がラーズアングリフの右膝間接を砕く。そして五制射目、コックピットへの直撃を覚悟した。 その直撃の刹那、異音と共に何かが視界に割り込む。眼前で七色に輝く障壁とピンクの光軸が火花を散らし、残響を残して消えていった。 両の手を大きく広げて身を挺して庇うように立ちふさがる機体を見上げ、クルツは抑えきれない笑いを噛み殺す。 「ようやくおいでなさって下さったわけだ」 見知った顔が一つ、モニターに映し出されている。赤毛に黒のメッシュの少女、アイビス=ダグラスだ。 「待たせてごめん。ここからは私も戦う」 「悪いな。こっちは弾切れ。ここらでギブアップだ。で、大丈夫か?」 おちゃらけた態度で両手を挙げてお手上げをアピール。そこから一転して真面目な顔つきに変わったクルツが言う。 それにアイビスはモニターに向かって右手を掲げて見せつつ、答えを返してきた。 「大丈夫じゃないよ。怖いし……ほら、手だってまだ震えてる。でも、ブレンがあの蒼いブレンを助けたがってるんだ。それに――」 「それに?」 「あたしもここで逃げたらジョシュアに顔向けが出来ない。 あんたが言うように胸を張って生きていくことが出来なくなる」 目を見、おっかなびっくりではあれど吹っ切れたようだな、と推察したクルツはクッと笑い、言葉を返す。 少なくとも、ただのやけっぱちでぶつかって行こうという心構えではないらしい。 「ない胸して、言うねぇ! 上等だ!!」 「一言余計だ!!」 「ハハ……怒るなよ。褒めてるんだぜ、これでも。 アイビス、モニターをこっちに回せ。俺がサポートをしてやる。思いっきり暴れてこい!」 「モニターを?」 「ああ! 敵機の行動予測と弾道計算、その他もろもろ全部任せろ」 「ナビゲーションの経験は?」 「ないっ!」 「えぇ~、無茶だって!!」 砕けた口調で返してきた言葉に、固さは取れたな、とにっと笑う。 軽口というのは、固くなって縮こまっている新米兵士に普段の自分を取り戻させてやるのに有効なのだ。それで随分と生存率が変わってくる。 「そいつは実際にやってみてから言う言葉だな。やってみもしねぇうちからする言葉じゃねぇ。少なくともないよりマシだろ? それに怪しければ無視してくれて構わねぇ」 「そりゃ……まぁ……」 「なら決まりだ! 俺とお前、二人で……いや、ラキも合わせて三人で奴に一泡吹かせてやろうぜっ!!」 「わかった。やるよ、ブレン!!」 威勢良く啖呵を切ったクルツに、一度目を丸くしたアイビスが目つきを変え、顔つきを変え、答える。 その姿を見たクルツは、いじけにいじけて一周したら良い顔になったじゃないか、と一人ごちた。 ◆ 突然の爆発にラキの挙動は遅れ、一時的にギンガナムを見失っていた。 爆発の余波か、電磁波が入り乱れてレーダーの効きがとんでもなく悪い。視界も立ち込めた薄煙でフィルターをかけられていた。 そして、二度目の爆発が起こる。 耳を劈く轟音と眩い閃光。遅れてやってきた空気の壁が薄煙を吹き飛ばす。 咄嗟に目を向けたその先に、左腕から投げナイフを投げるように光軸を飛ばすギンガナムの姿があった。視線誘導に引っかかったように、光軸が殺到する先に自然と目が向く。 「あれは……ブレンパワード? ……っ!!」 クルツのラーズアングリフと白桃色のブレンパワードをラキが視界に納めるのと、ギンガナムが大地を踏み鳴らし進撃を開始したのは、ほぼ同時だった。 咄嗟に視線を戻す。またしても出遅れた。 猛然と突撃を試みるギンガナムに対し、初動の遅れたラキは間に割ってはいることが出来ない。間に合わない。 が、それはあくまでラキに関してだけのことである。 ラキよりも素早く反応を起こしたネリー・ブレンが跳ぶ。バイタルグローブの流れは一切合財の距離をふいにして、ネリー・ブレンをギンガナムの真正面へと誘う。 ジャッという鋭い反響音。 咄嗟に掲げられたアームプロテクターと唐竹割りに振り下ろされた刀剣の間で、火花が奔る。 「ブレン、弾け! 押し合うな!!」 『緊』と乾いた音を残して、ブレンが飛び退いた。 格闘戦の為に造られたシャイニングガンダムとブレンパワードでは、人で言うところの腕力・筋力がまるで違っている。 だからこそ押し合わずに弾く。単純な力比べでは敵うはずもない。 ならどうすればいい? こんなときにジョシュアならどう戦う? 思案を巡らせる。巡らせるうちに再び身の内で疼き始めたモノを感じ取り、思わず手に力を込めた。両の手はネリー・ブレンの内壁にバンザイに近い形で添えている。 そこはほんのりと暖かい。その感触を肌から感じ取り、ラキはホッと息をつく。 大丈夫。感覚は戻っている。 目も見える。耳も聞こえる。鼻も利くし、ブレンを感じることも出来る。大丈夫。まだ大丈夫だ。 そう何度も自分に思い聞かせた。そしてそこに意識を割かれ過ぎた。 風切り音を残して銃弾が飛来する。それはシャイニングガンダムの頭部に誂られたバルカンの弾。 意識を自分の内側に向けていたのに加えて、光を発するビームとは違い闇に紛れる実弾。視認のしにくさの分だけ反応が遅れた。 回避は間に合わない。だが、この程度の弾ならチャクラシールドで弾ける。 そう思い、チャクラシールドを張る瞬間、スッと右方向に回り込むうっすらと白くぼやけた帯が目を掠めた。 しまったっ! チャクラシールドが展開する。七色に揺れ、輝くチャクラの波に視界が遮られる。透明度の高いチャクラ光ではあるが、その輝度は高い。そして、今は夜。目標を見失う。 バルカンを弾き終わり視界が開けたとき、それは頭上に回りこんでいた。 右方向に注意を払っていたラキは完全に意表を衝かれた形となる。上方から勢い良く突っ込んできたギンガナムに対して、ブレンバーで受けるのが精一杯の反応だった。 だが、真正面から受け止めすぎた。上方からの押しつぶすような巨大な圧力。受け流せない。弾き、飛び退くにしても大地が邪魔になる。 「ブレン、耐えてくれ」 耐える。それが唯一残された選択肢。 足場の舗装道路が砕け、アスファルトの破片が舞い上がる。嫌な音を立ててブレンバーの刀身に皹が走る。 そして、次の瞬間――圧力は消え去った。一条の閃光が眼前を掠め飛び、その対応に追われたギンガナムの機体の姿が遠くなる。 クルツか。そう思った耳に飛び込んできたのは、まったく聞き覚えのない声だった。 「ラキ、これからあんたを援護する」 「お前……は?」 思わずキョトンと呆けたような呆気に取られたような顔になって、ラキは呟いた。突然、モニターの隅に赤毛の少女の顔が映し出されたのだ。 「アイビス=ダグラス。ラキ……あんたを探してた」 「アイ……ビス?」 「うん。あんたに伝えなきゃならないことがある。ジョシュアは……」 「知っている。ジョシュアはお前を守って死んでいった……」 アイビスの言を遮って、ジョシュアの死を口にする。その言葉にモニター越しの顔は俯いて押し黙った。 アイビス=ダグラス、そう名乗る少女の顔を見、ラキは話しかける。 「アイビス、私もお前を探していた。今会えてよかった。そう思える」 「えっ!?」 その声にパッと伏せていたアイビスの顔が上がった。戸惑い表情がそこには浮かんでいる。 微笑みを返す。意図した笑みではなかった。自然と口元が綻んだのだ。 『今』会えてよかった。本当にそう思える。 今ならまだいつもの私のままでいられる。でも二時間後三時間後は分からない。 次の放送を迎えたとき、いつもの自分でいられるという保証はどこにもなかった。 瞼を閉じ、ブレンの内壁に触れる両の手に神経を集中させる。 ほんのりと暖かい。気持ちを落ち着かせ、心を穏やかにさせる暖かさだ。 大丈夫。今の私はいつもの私だ。 「ラキ」 呼ばれて、もう一度アイビスに視線を戻した。そこには戸惑いの色はもうない。 あるのは一つの決意だけ、それが言葉となって飛んで来る。 「ジョシュアの弔い合戦だ。あいつを、ギンガナムを倒すよ!」 あいつにジョシュアは殺されたのか、と思った次の瞬間、ジョシュアはそれを望むのだろうか、とふと疑問が頭をもたげた。 あの時、ジョシュアはギンガナムの名を出すことはしなかったのだ。 「二人で楽しくやってるところ悪いがな。そろそろ奴さん仕掛けてきそうだぜ」 どちらにしても戦わないわけにはいかないだろう。二体のブレンはともかく、クルツのラーズアングリフは損傷が大きそうだ。逃げ切れるとはとても思えない。 思いなおし、ラキはギンガナムを睨みつける。 それにジョシュアがどう思おうと、仇は仇なのだ。ジョシュアを殺した者が生きている。それはやはり納得がいかない。許せないのだ。逃げるという選択肢は今はない。 「ああ、ジョシュアの仇討ちだ!!」 →Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―(3)
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YF-19 機体名 YF-19 全長 18.47m(ファイター時) 主武装 マウラーREB-30G対空レーザー機銃×1マウラーREB-23半固定レーザー機銃×2マイクロミサイル×24中距離ミサイル×6ハワードGU-15ガンポッド×1:バトロイド時のメイン武装。ミサイルを打ち落としたりと、防御にも使える。 特殊装備 フォールドブースター 片道だけだが,ワープを可能とするブースター ピンポイントバリアシステム 防御力の向上、格闘戦の際の機体保護。ご存知ピンポイントバリアパンチなど、使う機会は多い。 ファストパック 肩の追加装甲と脚部のミサイルランチャー。 移動可能な地形 空 F,G 陸 B,G 海 ×地 ×F=ファイター、G=ガウォーク、B=バトロイド 備考 エンジン 新星 P W ロイス FF2200熱核バーストタービン×2推力 56500kg×2最高速度 M5.1+(高度10000m) M21.0+(高度30000m) ※いずれもファイター時フォールドブースター、ファストパックを装備しています。
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二つの依頼 ◆7vhi1CrLM6 空が白みを帯びていく中、少女は一人こっそりと草原の中に穿たれたクレーターの穴へと近づいていった。 その中心で少年は固く膝を抱え、顔の下半分をうずめて、身じろぎもせずにじっとしていた。 瞬きもせずに光らせている目は少女を見ようともしない。 人が近づいてきたということに気づいてもいないのかもしれなかった。 やがて虚空を見つめていた瞳だけを動かし、呻くように言葉が漏れる。 「慰めごとはいらない。もう少し一人にしてくれないかな」 「そんなんじゃないわよ」 少女は動かず、じっと少年を見つめている。 どんな説得も、慰めの言葉も、今の少年には無意味なように思えた。 無力感とやりきれなさが混在しているのだろう、疲れて息を吐くように少年は言ったものだ。 「ソシエも僕に死んだ人の遺志を汲みとれって言うんだろ?」 自嘲と皮肉の響きが込められた口調だ。 「心配しなくてもいいよ。今だけだから……もう少ししたら今までと同じように頑張れる。そうしなきゃ誰も助けられないんだ」 無気力な響きだった。好きでするわけではない、仕方がないから嫌々やるのだという風にさえ聞こえてくる。 その様子にわずかに眉を顰めた少女は少年に近づき、並んで座り込んだ。 「キラはどうしたいのよ? ラクスさんの遺志を継ぎたいの? それとも何もかもここで投げ出してしまいたいの?」 「両方だよ」 投げやりに少年は答えた。 「ラクスは平和な世界を望んでいた。だから、この殺し合いを良く思わなかっただろうし、生きていれば止めるために力も尽くしたと思う。 その遺志は汲みとってあげたいと思う。添ってあげたい。だけど……ラクスがいない。いないんだ」 低く呻く。 「君の言うとおりだ。もう……何もかもがどうでもいい」 少年から視線を動かし、空を見上げた。重症だ。 身近な者を失ったときの絶望の深さを、少女はよく知っている。それだけに言葉が見つからない。 『皆様、おはようございますですの』 不意に幼い少女の声が響き渡り始めた。 それはこの世界中のどこにでも響き渡る声のはずなのに、ただ一つ目の前の少年の心には響いてこない声のように感じられる。 事実少年はこの放送が耳に入ってないかのように無関心な態度をとり続けていた。 だが、一度二度その腕に力が篭るのを少女は見ていた。 放送が過ぎ去って、どうすべきか迷った末に少女が口を開く。 「アスランって知ってる人? それとカズイって人も……」 少年の体が大きく震える。それを返事と少女は受け取った。 「そっか……」 再びの沈黙。ややあって少年がその重い口を開いた。 「もういい。もう十分だ。そう思ったはずなのに……」 「ここに集められる少し前、お父さまがお亡くなりになられたんだ」 割ってはいる形で発せられた少女の言葉に、少年の表情が動いた。 「ビシニティの成人の日に突然ね。月から降りてきた連中と戦争になったのよ……それに巻き込まれて……。 私もしばらくベットに潜り込んで泣いていることしかできなかったわ。私がどれほどムーンレィスを呪ったかあなたにわかる? そしたらメシェーがやって来て、あのロランが戦っている教えてくれたわ。お布団にもぐりっぱなしの私に向かって言ったのよ。 『ソシエが寝込んでたら、お父さんなんて言うかね? ハイム家を継いでくれなんて絶対に言ってくれないよ』って。 『手伝わない? お父さんの仇を取りたくない?』って。私は仇が討てるんだって思ったわ」 少年はしばらく黙っていた。真顔で少女を見つめている。 「復讐はいけないことだとは言わないんだ」 「そんなこと言えるわけないじゃない」 いかにもそれが当然と言わんばかりに胸を張って、少女はあっさりと言い放つ。 身近な者を失った直後に襲ってくる身が竦むほどの深い絶望。それ知っている少女にとって、それは自然な言葉だった。 とは言え、内心はそれほど簡単な話でもない。 少女は知っている。いつの間にか姉と入れ替わっていた月の女王さまと月と地球の間で板ばさみになった身近な少年二人の苦悩を、みんな知っているのだ。 「キラはどう思うのよ?」 「分からないよ。殺されたから殺して、殺したから殺されて……それが正しいとは思えない……それは分かるけど」 歯切れの悪い少年の言葉に、少女は言い含めるようにして話し出す。 「そんな奇麗事はある日突然理不尽に親を失ったこともなければ、へんてこな殺し合いに呼ばれて友達や恋人を失ったことのない人達に言わせておけばいいのよ。 いい? 他の誰も言わないのなら、私が言ってあげるわ。 あなたには仇を討つ権利がある。無念を晴らす義務も。虚しい事だったなんていうのは、やってみてそう感じたときに言えばいいのよ」 無論、少女もその言葉の全てが正しいこととは思っていない。だが、自分はそうやって立ち直っていったのだ。 生きる気力を根こそぎ奪っていくほどの絶望から今ここで立ち直らせる方法を、他には知らないのだ。 時間が全てを解決してくれる。それが頭にないわけではない。それも正しいのだろう。 だが今ここではその時間が圧倒的に足りないのだ。気がすむまで悲しみ泣き暮れるための時間がここでは許されないのだ。 だから少女は仇を討てと憤然と言い放ち、復讐を肯定した。それが少年の為になると信じて。 黒い深い瞳にゆっくりと強い光が戻っていくさまを、少女は僅かな罪悪感と共に見ていた。 「ありがとう」 「何がよ?」 「ムサシさんが死んだとき、君が止めてくれていなかったら僕は取り返しのつかないことをしていたと思う」 後頭部をさすりながら言う少年に、少女は急にしどろもどろになってバツの悪そうな顔を向けた。 バールのような物で力一杯強打したのだ。返す言葉があるはずもなかった。 ◆ 放送が流れてからしばらくの間、ロジャー=スミスは天を仰いでいた。 21人。前回の放送と合わせて生存者は半分以下になったという事実。犠牲の多さが胸を刺す。 ――私は何をしていた? そうやって押し寄せて来る後悔の念を振り切って、男は現実に目を向けることを選択する。 今は後悔している時間すらも惜しい。 「トモロ、ガイという男が前回の戦闘でどうなったか知らないか?」 「ガイ? あの戦場にいたのか?」 「わからない。だが、いれば濃紺の戦闘機に乗っていたはずだ」 男が目覚めたとき、既に戦場は終焉へと向かっていた。 ムサシは既に死に、黒い小型機は姿をくらませ、Jアークが離脱を開始したところだったのだ。 ゆえにガイの戦闘機を男はあの場で確認できてはいない。 付け加えればガイというのが本名かどうかも妖しかった。彼はユリカ嬢に素性を隠していた節がある。 「この戦闘機か? これは墜落している」 「あー、その戦闘機!」 そう言ってモニターに映像が投影されるのと、背後からソシエの声が飛んできたのは同時だった。 相変わらず元気のいいお嬢さんだ。そう思いながら振り返る。 「何かしっているのかね?」 「ううん。何も知らないわよ」 少女は泰然と答えてずかずかと足を踏み入れてくる。だが、そんな少女よりもロジャーの目をひいたものがあった。 入り口付近に少年がきまりの悪そうな顔で立っている。説教を受けた直後の態度として実に年相応な態度だ。 少し煙たがられたかなと思いつつ声をかけた。 「どうした? 入ってきたまえ」 それでようやく足が進み、中でモニターに映った戦闘機を見て余計に気まずい顔になった。 それはロジャーの仲間であり、少年が仕掛けた攻撃を防いだ戦闘機である。無理もない。 しかしそれに気を使っている暇はない。気まずかろうとなんだろうと、ガイの生死は大切な話だ。 「トモロ、墜落と言ったな。詳しい話を聞かせてくれ」 「いえ、僕から話させてください」 そうして一歩を踏み出したキラが「詳しいことはわからない」と前置きを置いて一連の流れを話した。 曰く。あの機体はこちらの放ったESミサイルを撃ち抜き防いでみせたが、ダイの艦橋が黒い小型機に切り刻まれたときにそこに飛び込んで、墜落したという。 戦艦の搭乗者を助けようと無茶をして破片に当たり、墜落したのだろう、というのがキラとトモロの共通した見解だった。 生死は不明という。 ロジャーは呻きを漏らした。搭乗者を助けようと瓦礫の中に飛び込んだというのなら、その助けようとした相手はユリカ嬢しかありえない。 ガイだったのは間違いないだろう。しかし、彼女は死んだ。そして、ガイの生死は不明。 つまり生きている可能性があるということだ。 ならば探さねばなるまい。そうロジャーは結論付ける。 ロジャー=スミスはあの男に頭を下げねばならない。ユリカ嬢を守れず、不甲斐なくも気を失っていたそのことを、だ。 それがけじめ。それをせずにのうのうと生きていられるほど、ロジャーの心は強くない。 「やはり、ガイを探さねばなるまい。いや、それだけではない。 レオナルド=メディチ=ブンドル・カミーユ=ビダン・ジョナサン=グレーン、この三名もだ」 それは仲間だった者の名前。仲間の仲間だった者達の名前。つまりはあの化け物に叛旗を翻す志を持っている可能性を持つ者の名前である。 当然のようにキラとソシエは頷いた。 「ロジャーさん、あの白いJアークよりも大きい戦艦とテニアも探してはもらえませんか?」 不意にキラから発せられた言葉に少なからぬ驚きを覚える。触れられたくない問題だと思っていたのだ。 それを押し隠し、射抜くような眼光で問い返す。どのような心積もりで言ったのか、それが問題だった。 「何のために?」 「一言で言うならば、復讐の為です。僕にはまだ何故マサキやムサシさんが死ななければならなかったのか、その納得がいっていません」 ロジャーの瞳に警戒の色が奔った。私怨でのみ動くつもりなら、それを押さえ込むのが分別のある大人の役割である。 例え協力関係を築くことは出来なくとも、あの集団を襲わせるわけにはいかなかった。 だが、ロジャーが思うほど、少年は短絡な思考の持ち主ではなかった。予想に反する言葉を少年は続ける。 「勘違いしないでください。あの戦艦と戦おうという気はありません。マサキもアスランもカズイも……ラクスも、誰に殺されたのかはわかりません。 でもムサシさんも含めてあの化け物の都合で殺されたということはわかります。だから皆の仇を討つということは、あの化け物を倒すということだと思います。 その為にも彼らと会って話がしたい……テニアも何か仕方ない事情があったのかもしれない」 そこで少年は言葉を区切った。字面だけ見るとまるで聖人君子かと思うような言葉だったが、響きはそうではない。 言葉の端々に苦渋が滲み出ている。だがそれはいずれ乗り越えていかねばならない道だ。 意を決したように少年の目がロジャーを見据える。 「ロジャー=スミス、あなたに依頼をお願いします。僕達とあの戦艦の仲を取り持ってもらいたい。 その為にあの戦艦を見つけ話し合いの場を設けていただくことを依頼します」 澱みのないいい目だった。 『男子三日会わざれば』と言うが、自分は今一人の少年の成長を見ているのだと思った。 僅かに笑い。殊更に芝居がかった態度をとる。その姿勢はクライアントと目の前にしたときそのものだ。 「いいでしょう。あなたの依頼をお受けします。 ならば、効率よく接触を取る為にも私は単独行動をとらせていただこう。 その為にも会談の場所と時刻を決めておこうか。場所も時刻も分かりやすいほうがいい。 さしあたってここらと次の放送時刻でいかがかな?」 そう言って拡げた地図上でE-5に架かる橋・H-8の小島等とひどく分かりやすい場所を選んで指し示していく。 それに対して遠慮がちに少年が異義を唱えた。 「ここ……では駄目ですか?」 「構わないが……何故ここなのだ?」 「大した理由じゃないんです。ただ、平和を願ったラクスが眠るここで話をしたいと思っただけで。 それに僕はここを戦場にはしたくないんです。それが向こうと戦う意志がないことの証明になるとは思いませんが……」 「いいでしょう。時刻は午後6時、場所はE-3このラクス嬢が眠るクレーターの中心で。 他に何か質問は?」 「はい!」 それまで黙って話の成り行きを見守っていた少女が勢い良く手を上げた。 ずっと口を挟みたくてウズウズしていた、そんな感じの勢いだった。目を輝かせて少女は言う。 「人を集めるんならあの戦艦だけにこだわらなくてもいいんじゃないかしら? どうせだったら会う人会う人に声をかけるべきよ」 出来る限り多くの同じ志を持つ者を集めようというのだ。 その方法まで含めて実に単純で分かりやすい話だった。何よりも理にかなっている。 それを自然と意識することなく言ってくるのだから大したものである。 「その通りだな。そうしよう。他にも何か言いたそうな顔をしているが、まだ何かあるのかね?」 笑みを絶やさずに言った言葉だったが、後にロジャーはこのことを後悔する羽目となった。 待っていたかのようにソシエが口火を切る。 「ロジャー、あなた最初の放送の前にもD-7の市街地にいたと言ったわね」 合流するまでの簡単な流れは互いに交換済みである。 そして、確かに放送前ロジャーはそこにいた。忘れもしない自身の依頼主を攫われたあの戦いのときのことである。 苦い思いが脳裏を横切ったが、そのことを億尾にも出さずロジャーは問い返した。 「いたが、それがどうかしたのか?」 「どうかしたわよ! あなたはそのときからお口の機械人形に乗っていたのでしょ?」 憤然と少女は言い放つ。 お口の機械人形とは凰牙のことだろうと当りをつけつつも少女が腹を立てている理由がどうにも掴めない。 黙って頷いた。 「あのときあなたは何の為にあの争いに割り込んだのよ!!」 「何のためにと言われても戦いを止める為としか……」 「他っ!!」 「たしか……手足を?ぎ取られた機体を助けに……」 「で、その機体はどうなったの?」 言われて絶句した。今の今まで忘れていたのだ。目の前の少女は壮絶な笑みを浮かべている。 もっともロジャーにも仕方のない理由はあった。目の前で危険人物に依頼主を攫われて、あのときはそれどころではなかったのである。 だが、ほったらかしにされた当事者にとっては堪ったものではなく、事情も知らない。おまけにロジャーにそのことを言い訳に使う気はなかった。 どう考えても分が悪い。 平謝りに謝ったのだが、半日前の鬱憤がとめどなく噴出し溢れ出した少女は止まらない。 よりにもよって凰牙をよこせと言い募り、約三十分の口論の末にギアコマンダー一つと何かあった場合には凰牙を譲り渡すという誓約書にサインを書かされて、一応の終わりを得た。 おまけに担保として腕時計を持っていかれる徹底ぶりである。頭が痛かった。 「使い方はこの紙に記しておいた。だが、私が元気なうちは渡すつもりはない。この時計も全てが終わったときには返してもらう」 渋々と白のギアコマンダーと腕時計を差し出したロジャーは、どこかやつれた風であった。 所持しているギアコマンダーは青・白・黒。一つ渡したところで大した影響はない。 そうして話し合いを終えた彼らは別々の道を歩むこととなる。 甲板を離れた凰牙は一先ずガイと白く巨大な戦艦の後を追うためE-7の市街地を目的地と定め、Jアークもまた別の方向に動き出した。 凰牙の中疲れた顔でコックピットシートに身を埋めたロジャーは思案する。 放送を聴いたときから考えていることがあった。 リリーナ嬢の依頼である平和的な解決のために最も有効な方法はこの殺し合いの意味を無くすことだ。 むしろそれでしか果たせないと言える。 そして、その具体的な手段は二つある。あの化け物を駆逐するか、話し合うか、だ。 より平和的な解決を望むのなら、それは話し合いによるものとなる。それは分の悪い賭けといえた。 対して駆逐する手段を選ぶのなら、分が悪い事実は変わらずともその悪さは幾分マシになる。 だが、その前提条件のハードルは高い。首輪の解除・戦力の充溢・化け物住処までの移動手段。 それに比べて話し合いの前提となる最低条件は驚くほど低い。移動手段それのみである。 それも最悪この身一つが通れるだけの手段でいいのだ。凰牙が話し合いに必ず要るというわけではない。 そしてこの殺し合いの現状は、時を掛ければ掛けるほど悪化の一路を辿る。 もし、もしもだ。 もしもあの化け物の元へ辿り付く手段が見つかったとして、そのときこの首にまだ首輪が巻かれていたとして、そのときに私はどうすればいいのだろうか? 彼女なら一体どうしたであろうか? その問いを一笑にふした。決まっている。彼女なら何の迷いもなくそこに飛び込んだだろう。 それがどれほど危険で困難な道でも、どれほど絶望的な状況でも、だ。ならば私は―― 「やっと繋がった。ロジャー、もう少し分かりやすく説明は書きなさい。この時計の使い方分かりにくいわよ」 突然、コックピットに響き渡る声。それに驚いて思考が中断させられた。 間違いなくそれはソシエ=ハイムの声である。既にJアークは遠い、通信可能な距離ではなくありえない出来事であった。 例えそれがロジャーが外部から持ち込んだあの腕時計であろうともだ。ゆえにロジャーは困惑した。 それに対して少女は茶目っ気たっぷりに言い放つ。 「ついてきちゃった」 「ついてきちゃったではない。Jアークに一度戻る」 「大丈夫よ。書置き残してきたんですもの」 「書置きだと?」 「そうよ」 そのころJアークでは―― 「トモロ、こんな書置きがッ!!」 「落ち着け」 『旅に出ます。探さないで下さい』と書かれた紙を片手にキラが慌てふためいていた。 再び凰牙。 ロジャーは思わず頭を抱えてキラに同情していた。だが、それを気にする様子は少女にはなく、むしろ畳み掛けてくる。 「『実家に帰らせていただきます』のほうが良かったかしら」 「戻る」 「無理よ。Jアークはとっくにレーダーの圏外でしょ? どうやって探すつもりなの?」 「計算づくと言うわけか……ならばもういいだろう? 一体何処に隠れているのだ。出てきたまえ」 額に青筋を浮かべつつロジャーは言った。コックピットには見当たらないのだ。 対して少女は何処までもあっけらかんとしている。そして恍けた様に返した。 「さてどこでしょう? ヒントは色んな瓦礫が入り込んでいるところ。中には青い鉱石みたいなのもあるわ」 「瓦礫は生き埋めにあったときに入り込んだのだろう。何処か分からん。いいからさっさと出てきたまえ」 「出て行くのは無理よ。そこと繋がってないんですからね」 「ならばせめてそこが何処か教えてはくれないか?」 よっぽど怒鳴ろうかと思ったそのとき―― 「そんなこと言わせる気? セクハラよ」 「なっ!!」 手痛い反撃が返ってきた。全く持って意味が分からない。何故居場所を聞いただけでセクハラになるのか、さっぱりだった。 実は凰牙の両足の付け根を結んだ部分の装甲の下には空間が存在する。 同じGEARに分類される電童にも存在するその空間は、かつて螺旋城に囚われたベガが脱出するときに地球まで使われていた。 そこにソシエは身を潜めていたのだが、ロジャーはそんなこと知る由もない。 そうして意固地になって場所を聞き出そうするロジャーと暴言を浴びせるソシエを乗せて、凰牙は早朝の空を飛んでいた。 「変態! このカラス野郎!!」 「いい加減にしたまえ!!」 ……飛んでいた。 【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー) パイロット状態:脱力、ジョナサンへの不信 機体状態:ジェイダーへの変形は可能?、各部に損傷多数、EN・弾薬共に100% 反応弾を所持。 現在位置:E-2南部 第一行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める 第二行動方針:ナデシコ組と和解する 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出】 備考:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復。】 【ソシエ・ハイム 搭乗機体:無し パイロット状況:右足を骨折 機体状況:無し 現在位置:E-4北部 第一行動方針:ロジャーに同行する 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める 第三行動方針:新しい機体が欲しい 最終行動方針:主催者を倒す 備考1:右足は応急手当済み 備考2:ギアコマンダー(白)とワイヤーフック内臓の腕時計型通信機を所持】 【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童) パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数 機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能) 側面モニターにヒビ、EN70% 現在位置:E-4 北部 第一行動方針:一先ずE-7市街地に赴きガイとナデシコの足取りを調べる(出来ればリリーナの首輪も回収する) 第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める 第三行動方針:首輪解除に対して動き始める 第四行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める 最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉) 備考1:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能 備考2:念のためハイパーデンドー電池四本(補給二回分)携帯】 【二日目6:55】 BACK NEXT 疾風、そして白き流星のごとく 投下順 選択のない選択肢 悪魔降臨・死の怪生物(インベーダー)たち 時系列順 命の残り火 BACK NEXT 張り詰めすぎた少年 キラ 黄金の精神 張り詰めすぎた少年 ソシエ 争いをこえて 張り詰めすぎた少年 ロジャー 争いをこえて
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ヴァイクラン 機体名 ヴァイクラン 全長 49.7m 主武装 オウル・アッシャー 特殊システムで強化させた念を放つ技。SP吸収効果があることから精神波の可能性もある。 ガン・スレイヴ 肩に付いた4基のガンスレイヴで敵を攻撃する。 ペリア・レディファー 暗黒物質の数価を変化させ、相手に放出する。それに取り込まれたら、その空間にできた2つの特殊空間に圧縮される。 アルス・マグナ・フルヴァン ディバリウムとヴァイクランが『ガドル・ヴァイクラン!』の掛け声で合体し、念のエネルギー波を放つ。 特殊装備 念動フィールド 念動による特殊フィールド。攻撃を緩和する。 合体 『ガドル・ヴァイクラン!』の掛け声でディバリウムと合体することができるが、通常活動はできない。 移動可能な地形 空中○、陸地○、水中×、地中× 備考 エアロゲイターの指揮官機のヴァイグルを改造した機体。通称俺のヴァイクラン(激嘘)カルケリア・パルス・ティルゲム(念動力感知増幅装置)を搭載しており、あまり念の強くない人間でも強力な念を使える。ディバリウムと合体し、ガドル・ヴァイクランとなるが、エネルギー消費が激しいのか、合体状態での活動は不可能っぽい。なお、この合体システムは地球の機動兵器を元に作ったらしいのだが、α世界にこれと似た変形構造をもつ機体は存在しない。坊よ、なにをモデルにしたんだ……ただ、合体毎に『ガドル・ヴァイクラン!』と叫ぶ辺り、よく研究してると思う。
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薄氷の同盟 ◆T6.9oUERyk どうしたものか。 蒼いMS(少なくともMSとよく似た)らしき人型機動兵器と対峙しながらヒイロ・ユイは考える。 背後を取っていながら奇襲を仕掛けなかったことから、相手に“今は”交戦の意思が無いことが分かる。 だが、相手は未だ何のアクションも仕掛けてこない。 対話の意思があるのか、値踏みでもしているのか、それとも単に戸惑っているだけなのか… こちらから通信を開くべきか。 油断無く蒼い機体を見定めながら、そう考え始めた矢先。 「新手か」 レーダーに反応、南方から一機接近してくる。 見ると対峙する蒼い機体も気づいたようだ、機体の向きを南側へと僅かにずらす。 そのままじりじりと時間は流れ。 やがてあらわれたのは、2門の巨大な砲を担いだ重厚なMS(?)。 その長距離砲撃戦用らしき機体から通信が入る。 『こちらは九鬼正義。そちらの2機、聞こえるかね?』 『こちらはヒイロ・ユイだ。』 黒い機体からは即座に感情の感じられない平坦な声が返る。 ややあって蒼い機体からも反応が。 『こちらはアスラン・ザラ』 こちらは何かを押し殺すような、そんな声が。 どちらの声音もまだ若々しい、少年らしいもの。 「ふむ、ヒイロ君にアスラン君か。一つ提案があるのだが、ここはまず情報交換と行かないかね?」 しばし沈黙があり。 『『いいだろう』』 二人の声が重なった。 「MU戦争に東京ジュピター、か。」 『信じられないのも無理ないな、私でも実際に体験していなければ到底信じられんだろう。 もっとも、人型機動兵器が主力の宇宙戦争というのも十分信じがたいがね。』 九鬼と名乗る軍人はそう苦笑したが、科学技術の集大成であるコーディネーター・アスランにしてみれば、 MUだのドーレムだのといったオカルト話は正直受け入れがたい。 逆にヒイロの語るA.C.歴の世界は宇宙移民やMSの台頭、など自分たちC.E.の歴史とよく似ており受け入れやすかったのだが。 最も、二人には肝心のナチュラルとコーディネーターの対立やコーディネーターの存在そのものを教えてはいない。 当然、自分がコーディネーターであることもだ。 自分と親友を引き裂いたナチュラルたちへの不信感はアスランの中で拭い難いものへとなっていた。 『MUとやらは俺たちをここに集めたあの怪物と関係があるのか?』 そのヒイロからの質問に、はっ、と我に返る。 そうだ、オカルトじみた存在ならこのゲームに巻き込まれた時点で嫌と言うほど思い知らされている。 『残念ながら、私もあのノイ=レジセイアとやらは見たことも聞いたことも無いな。』 『残念ながら、私もあのノイ=レジセイアとやらは見たことも聞いたことも無いな。』 「そうか。」 落胆はなかった。 元々、さほど期待していたわけでもなく。 九鬼が真実を述べているとも限らないのだ。 (リリーナ…) 九鬼はリリーナ・ピースクラフトと名乗る少女とその仲間に襲撃された、と言った。 武器を捨て話し合いましょう、と言われ信用して近づいた所で奇襲を喰らい、ほうほうの呈で逃げ出したと。 その話を無表情に聞きながら、ヒイロはこの男は信用できないと確信した。 同時に思うのはリリーナの安否。 九鬼の話し方から彼女がまだ無事らしいのことは分かったが、行動をともにする輩が信用できるとは限らない。 リリーナを誰かに殺させる訳にはいかない。彼女は自分が殺さなければならないのだから。 ヒイロ・ユイの行動方針は定まった。 リリーナ・ピースクラフトを探し出す、いかなる手段を使ってでも。 情報交換は順調に進み、頃合を見計らって九鬼は提案する。 「それでだ、身を守るためにも私たちでチームを組まないかね?」 しばし沈黙があり 『いいだろう』『分かりました』 少年たちからは承諾の返事が。 その返事を聞き、九鬼は内心狂喜する。有力な手ごまが二人、手に入ったのだ。 アスラン・ザラはザフトという軍隊の、ヒイロ・ユイはOZという私設軍でそれぞれエリートパイロットだったらしい、 軍人らしく武器を捨てて話し合うなどと言った腑抜けた考えは持っていない。 さらに二人の機体は高機動中距離・近距離戦用で、自機は長距離支援用。 二人を前衛に立たせ、自分は火力支援に徹すれば身の安全は確保される。 ようやく、自分にもつきが回ってきたようだ。 こうして仮初の同盟は成立した。 【ヒイロ・ユイ 搭乗機体:レイダーガンダム(機動戦士ガンダムSEED) パイロット状況:冷静、疲労、体中に軽い痛み 機体状況:EN切れ寸前 現在位置:F-6 第一行動方針:何とかして補給する 第二行動方針:リリーナの捜索 最終行動方針:???】 【アスラン・ザラ 搭乗機体:ファルゲンマッフ(機甲戦記ドラグナー) パイロット状況:冷静 機体状況:良好 第一行動方針:生きて返る、それ以外は未定 最終行動方針:未決定】 【九鬼正義 搭乗機体:ドラグナー2型カスタム(機甲戦記ドラグナー) パイロット状況:上機嫌 機体状況:良好、弾薬を多少消費 第一行動方針:手ごま二人の信用を得る 第二行動方針:確実に勝てる相手以外との戦闘を避ける 最終行動方針:ゲームに乗って優勝】 備考:ヒイロは経歴を詐称しています(OZのパイロットと偽る) また九鬼に不信を抱いています。 アスランもコーディネーターのことを伏せています 【初日 16 00】 BACK NEXT 我が道を往く人々 投下順 戦場の帰趨 我が道を往く人々 時系列順 出会いと再会 BACK 登場キャラ NEXT 迷いの行く先 アスラン 任務……了解 迷いの行く先 ヒイロ 任務……了解 The two negotiators 九鬼 任務……了解
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――Opening―― うっすらと目を開けて真っ先に考えたのは、どうして自分はこの冷たい床の上で横になっているのかという事だった。 まだはっきりとしない意識のまま、少年――キラ・ヤマトはゆっくりと体を起こした。 そのまま周囲を見回す。そして目に入ってきた光景に、キラはまだ夢の続きを見ているのかと思った。 見知ったアークエンジェルの艦内、ではない。そこは見覚えの無い、広いドーム状の空間だった。 照明器具の類は何一つ無いにも関わらず、ドームの天蓋全体がうっすらと発光しているおかげで 場内はかろうじて人の顔を判別できる程度には明るい。 どうやらこの部屋には他にも大勢人がいるらしく、ざわめきが部屋全体に反響している。 頭にも徐々に血が巡ってきた。しかし、依然として状況が飲み込めない。 記憶を辿ろうにも、ここに来る直前だけが何故かはっきりしない。 「どこなんだ……ここは」 「さあ……わたくしにも、その問いに答えることは出来かねますわ」 何気なく発した独り言に返事が返ってきたことに驚いて、キラは振り返った。 そこにいたのはキラも良く知る少女――プラントの歌姫、ラクス・クライン。 「ここは……君はどうしてここに?」 「分かりません。わたくしも、気がついたらここに……ただ、どうやら他の方々も、同じのようですわね」 ラクスの視線を思わず目で追う。 いつの間にか薄明かりに目が慣れて、さっきよりもはっきりと場の状態が把握できた。 不安げな表情の少女達が、互いに寄り添い合っているのが見える。 赤いアフロヘアーの少年が、苛立った口調で何か叫んでいるのが見える。 奇妙な仮面を着けた男が、腕を組み歩き回りながら物思いに耽っているのが見える。 確かに、望んでこの場所にいる人間はいないようだった。 キラの背中を冷や汗が流れ落ちる。 嫌な予感がする。何か、とてつもなく良くない事が起こるような。 ――その予感は、それから程無くして最悪の形で的中することとなる。 『目覚めよ……人間達』 その声が『自分の頭の中から』聞こえてきた時、キラはこの異様な状況についに自分の精神が異常をきたしたのかと思った。 しかしどうやらそうではないらしく、ラクスも、場内の他の人間達も一様に同じ声を聞いたようだった。 ざわめきが場の空気を介して伝播する。 状況を確認しようとキラが口を開きかけた矢先、声が再び脳内に響いた。 『我が名は……アインスト……ノイ=レジセイア……』 混乱する頭を無理に急き立て、キラは何とか今の状況を把握しようと必死になった。 今、声は確かに自分の名を名乗った。という事は、この声の主はどこからか自分達の脳内に語りかけているというのか。 昔読んだ空想小説に出てきた単語が思い出された――テレパシー? いや、そんな非科学的な…… しかし次の一言で、キラの思考は今度こそ完全に停止することとなる。 『……これからお前達には……最後の一人になるまで、殺し合いを、してもらう』 場内を完全な沈黙が支配する。 しかしそれも一瞬の事で、戸惑いは細波のように部屋中に広がっていった。 戸惑いは徐々に増大し、やがて決壊する。 「ちょっと、誰だか知らないけど、いきなり人をこんな所に連れてきて、なに勝手な事言ってるのさ!」 赤髪の小柄な少女が、何処にいるのかも知れぬ声の主に向かって叫んだ。 慌てて、傍らの金髪の少女が腕に取り縋って制止しようとする。 「テ、テニアちゃん、落ち着いて!」 「落ち着けるもんかっ! ……ねぇ、聞こえてるんでしょ!? だったらさっさとあたし達を元の所に返してよっ!」 少女の決死の叫びに勇気付けられたのか、場内のあちこちから野次と怒号が飛び交い始める。 まるで自分の中の不安を、無理に動的なものに変えて吐き出しているように。 やがて、新たな声が脳内を震わせた――僅かな苛立ちを含んだようにも聞こえる声が。 『……愚かな……』 瞬間、ドームの床が、壁が、天井が、ぐにゃりと歪んで掻き消えた。 そして代わりにそこに出現したもの――その異様さに、誰もが戦慄する。 異形。それ以外に、その存在を形容する言葉が見つからない。 禍々しく伸びる角、おぞましく蠢く触手、生物とも無機物とも取れない怪物的なフォルム、原色を切り貼りしたような体色…… そして、暴力的なまでの大きさ。 あらゆる進化の可能性を内包した存在が、そこにいた。 会場内の誰もが、この異形の存在こそがその声の主である事を悟る。 再び響く声。 『人間共が……我に抗う事など……永劫叶わぬと知れ』 そして世界はまた逆回りに歪み、たちまち元のドームへと戻る。 先ほどの異形の存在が出現した痕跡など、何一つ残ってはいない。 何が起こった? パニックになりかけた意識で、キラは思考する。 (…………幻、覚…………!?) それを否定するにはあまりに現実から乖離しすぎていて、それを肯定するにはあまりにリアルすぎる光景。 このテレパシーと同じようにイメージを伝えてきたというのだろうか、それとも……? あの衝撃の後では、どんな理性的な思考ももはや空しい。 赤髪の少女もやはり無理をして虚勢を張っていたらしく、金髪の少女に抱きかかえられていた。 会場は水を打ったように沈黙を取り戻していた。 「ここからは私が…………アルフィミィ、と申しますの。皆様、お初にお目にかかりますの」 ドームの天蓋の頂点から、まるでスポットライトのように光が降りる。 その中心に、蒼い髪の少女が立っていた。 年恰好は十代前半といった所であろうか、どこか人間離れした神秘性を感じさせる。 どうやら場の主導権はあの声の主からこの少女へと移ったらしく、アルフィミィと名乗った彼女はゆっくりと話し始めた。 「まず……先ほどの通り、皆様には殺し合いをしていただきますの」 殺し合い。その言葉が聞こえた瞬間、場の空気が僅かに張り詰めた。 キラの隣で、ラクスが無意識に身構えるのを感じた。 「皆様一人ひとりには、それぞれ機動兵器が一機と食糧や地図などの最低限の荷物が支給されますの。 各自それを受け取り次第、ここから『箱庭』へと転送いたしますの」 アルフィミィは淡々と説明を続ける。 「そこで最後の一人になるまで、殺しあっていただきますの。最後に残った優勝者は元の世界に戻してあげますの。 それだけではありませんの、優勝した方には素敵なご褒美が――」 「……アルフィミィ嬢。少し、よろしいか」 説明を中断する声の主に、アルフィミィだけでなく会場全体の視線が集まった。 全身黒尽くめのスーツを身に纏った男だった。毅然とした態度で数歩前に歩み出る。 「あなたは……思い出しましたの。お噂はかねがね、ですの……Mr.ネゴシエイター」 「そのような社交辞令を聞くとは思わなかったが……まあいい。 アルフィミィ嬢、三つほど質問がある。答えていただけるだろうか」 「熱心な方がいてくれて嬉しいですの。答えられる範囲でお答えいたしますの」 「それは結構」 ネゴシエイターと呼ばれた男は軽く咳払いをして、それから口を開いた。 「まず第一。そもそもこの殺人ゲームには何の意味があるのか。第二に、なぜ我々が選ばれたのか。そして第三に――」 彼はそこで一旦言葉を区切り、 「我々の何処にこの馬鹿げたおふざけに付き合ってやる道理があるのか、だ」 一気に言い切った。 会場中を、ざわめきが駆け抜ける。 (なんて人なんだろ……) 黒スーツの男の後ろ姿を見ながら、キラは内心で驚嘆した。誰もが聞きたくとも聞けずにいた事を、彼はあっさりと…… アルフィミィは僅かに思案しているようだったが、すぐに男の方へ向き直った。 「分かりましたの。順番にお答えいたしますの」 会場内の誰もが、彼女の言葉に耳を傾ける。 「まず一つ目は……秘密ですの。言えませんの」 「……何?」 「それから二つ目……これも言えませんの。言う必要もありませんの」 「……アルフィミィ嬢、貴女の対応には残念ながら誠意が欠けていると言わざるを得ない。 それとも、そのような説明で我々が納得するとでも?」 「納得していただく必要はありませんの……私達の言うとおりにしてくれればそれでいいですの」 「…………」 黒服の男の表情が僅かに歪む。しかし彼が次の言葉を発する前に、アルフィミィは第三の答えを口にしていた。 「三つ目の答えは、あなたの首元にありますの」 訝しげに自分の首に手をあてた男の顔が、瞬時に強張った。その反応に不審なものを感じたキラも、思わず自分の首に―― そして驚愕した。自分の首に、冷たく硬い感触を持つ何かが装着されている。 咄嗟にラクスの方を振り返る。ラクスも同じ事を考えていたらしく、こちらを見る表情に戸惑いの色が浮かんでいる。 そして彼女の細い首に、鈍い金属光沢を放つ首輪が嵌っていた。 ラクスの反応を見るに、どうやらキラ自身の首に嵌っているのも同じものらしい。 どうやら他の参加者達も同様の事実に気付いたらしく、戸惑いの声が同時多発的に起こった。 首輪に手をかけ、何とか外そうと試みる人までいる。 アルフィミィは満足そうに頷き、再度ルール説明を開始しようとした。 しかしそれはまたしても遮られる事となった――今度は、女性の声によって。 「お嬢ちゃん……」 金髪をポニーテールに結んだ女性が、アルフィミィに呼びかける。 女性は、アルフィミィのことをまるで昔から知っているかのような、形容し難い表情を浮かべていた。 「……何か用ですの?」 「……最初にあなたがこの部屋に入ってきた時から、何となく嫌な予感はしてたのよ。 ねぇお嬢ちゃん……これはいったいどういう事? あなたにはもうあの連中のいいなりになる理由なんてないはずだわ。 それに何より、このゲームっていうのは――」 「……私は貴女を知りませんの。ですから、何の事だか分かりませんの」 「え……お嬢ちゃん?」 予想外の返答に、エクセレンと呼ばれた女性は狼狽を見せた。 代わりに彼女の恋人と思しき男性が、エクセレンの後を引き継ぐ。 「何かあるのかもしれないと思ってさっきから黙って聞いていたが……分からないな、どういう事だ? お前は――」 「知らないと言っていますの。用が無いなら話しかけないでほしいですの」 「アルフィミィ!」 「お嬢ちゃん!?」 「……もういいですの。貴女には、これからの説明の『実験台』になってもらいますの」 明らかに動揺を隠せない二人に残酷な言葉を投げつけ、アルフィミィは他の参加者の方へ向き直る。 「皆様! このゲームには、三つの禁止事項がありますの! 一つ目は、一日二回の放送で発表される『禁止エリア』に侵入すること! 二つ目は、この首輪を力づくで外そうとしたり、強い衝撃を与えたりすること! 三つ目は、最後の死者が出てから24時間以内に誰も死亡者がでないこと! そしてこれらに違反した時はペナルティが与えられますの――それは、」 そこで言葉を区切り、アルフィミィはエクセレンの方へ身体全体を向ける。 アルフィミィの言動を目の当たりにして、エクセレンの顔に悲しみと寂しさと憂いとが同居した悲痛な色が浮かぶ。 「お嬢ちゃん……まさか、本当に私たちのこと……?」 「…………さよなら、ですの」 そして、少女は両手を小さく一度、叩いた。 炸裂音。 エクセレンの身体は二、三度大きく痙攣し、そのまま重力に任せて冷たい床に倒れ伏した。 一瞬遅れて雨のように降り注ぐ、血と肉の混合物。動かない彼女の周囲に、赤い水溜りが広がっていく。 彼女はもう何の表情も浮かべてはいなかった――いや、もはや表情そのものが存在しなかった。 なぜなら彼女のその端整な美貌は、突如爆発した首輪によって飛び散ってしまったのだから。 「…………エクセ、レン…………?」 すでに物言わぬ彼女の名を呼びながら、彼女の恋人がよろめきながら歩み寄っていく。 一歩、二歩、そこで床に広がる赤を見て、彼は茫然自失の顔つきのままその場にくずおれて膝を突いた。 無言で肩を震わせる彼を僅かに一瞥してから、アルフィミィは仮面のような表情のまま淡々と説明を続ける。 「皆様の首輪には、人一人殺すのに十分な威力の爆弾が仕込んでありますの……言う事を聞いてくれない悪い子は、お仕置き、ですの」 悲鳴を上げる者さえ、いなかった。 不自然とでも形容すべき静寂が、部屋中を満たしていた。 たった今誰もが目にした、あまりにあっけなくてあまりに現実離れした、死。 もはや、誰一人として疑う者はいなかった。 この首輪をつけている限り、自分達の生殺与奪の全ては赤の他人の手のひらに握られているということ。 そして、自分達はもはや殺人ゲームのコマの一つに過ぎず、主催者の言うとおりに殺し合う以外に道は残されていないことを。 【エクセレン=ブロウニング:死亡】 【残り53人】 【プログラム開始】 NEXT 投下順 恋と呪い 時系列順 悩める少年 登場キャラ NEXT ノイ・レジセイア 古よりの監査者 アルフィミィ 第一回放送 キラ 人とコンピューター ラクス 歌と現実 キョウスケ 貫く、意地 エクセレン ロジャー The two negotiators テニア 憎悪 メルア 憎悪 コスモ 金髪お嬢とテロリスト ユーゼス 仮面の舞踏会